ネットでイヤホンを注文する。
朝日新聞の「かしこく選ぶ」シリーズで
すぐれもののイヤホンがとりあげてあり ほしくなった。
連載の1回目は、3000円くらいで手にはいる商品にしぼり、
3点が紹介されている。
オーディオテクニカからでているATH-CK330Mは、
「3千円でこのクオリティーが出せるのかと驚いた」
なんてかかれており、購買意欲をくすぐられる。
実勢価格が2千円前後なのもたいへんよい。
新聞記事に刺激された人間が
わたしだけでなく、おおぜいいるだろうから、
ものすごい数のATH-CK330Mがうれたのではないか。
3ヶ月まえに、わたしは3000円のヘッドホンをかっている。
ツタヤをうろついていたとき、
おためしコーナーできいたCDの音がとてもきれいだったので、
わたしもそんな音がきけるヘッドホンがほしくなった。
家でiPodをきいてみると、
たしかにそれまでのイヤホンとはぜんぜんちがい、
クリアーな音が耳にここちよい。
それでじゅうぶん満足していたはずなのに、
新聞でイヤホンが紹介されると、それもまたほしくなった。
世のなかは、ものをもたずにくらす価値観へとうつっていながら、
わたしはいまだに物質の魔力からにがだせない。
「いいものをほんのすこし」もてばいいところを、
「やすいものをあれもこれも」が わたし流だ。
「3千円でこのクオリティーが出せるのかと驚いた」は
わたしにとってころし文句となった。
ネットでATH-CK330Mを注文すると、1640円で手にはいった。
3ヶ月まえに3000円でかったヘッドホンとききくらべると、
正直なところ、どちらもそれぞれいい音としかわからない。
ヘッドホンは耳を完全におおう形をいかして あつみのある音、
イヤホンは、雑音が完全におさえてあり、
音が 耳からちょくせつ脳みそにとどく迫力に感心する。
ワインのボルドーとブルゴーニュをのんでも、
どちらもそれぞれにおいしいことしか わたしにはわからない。
ちょうどそんなかんじで、
3000円のヘッドホンと1640円のイヤホンは、
それぞれもち味をいかしてたのしませてくれる。
おおきさでいえば、もちろんイヤホンのちいささはメリットとなる。
わたしはつねにいつかでかけるであろうバックパック旅行を
頭のかたすみでイメージしており、
しかるべきときがくれば、コンパクトに荷物をまとめて
世界のボーダーをさまよう自分のすがたをおもいうかべる。
わかものは、ムダな荷物がたくさんつまったリュックをせおえても、
わたしには30リットルのリュックに8キロの荷物が限度だろう。
年をとったら、おおきなトランクに
ヘッドホンでもなんでも たくさんの荷物をつめこんで
優雅な旅行をすればいいけど、
わたしのこのみにあわないし、
だいいち、それだけのお金を準備できない。
そんなときに、そこそこの音をきかせてくれる
ちいさなイヤホンはとてもありがたい。
ヘッドホンをかったときのブログには、
旅行へももっていきたくなる音のよさ、
なんて調子のいいことをかいたけど、
イヤホンでいい音がきけるのなら、それにこしたことはない。
こんどかった164円のイヤホンは
場所をえらばず 純粋に音をたのしませてくれるだろう。
むすこへのしおくりがおわり、
自分の生活だけを心配すればいい日がくるまで、
旅行をイメージしながら そこそこの道具をあつめておきたい。
しばらくは それが旅行のかわりだ。