地区の運動会に参加する。
最初の競技が100メートル競争で、
結果からいえば、4人ではしって4位だった。
レースの1時間まえからアップをはじめ、
はやい足の回転にからだをならし、
じっくりストレッチもして ケガを予防したのに。
いっしょにはしる顔ぶれをみると、
いかにもおじさんふうなひとがいて、
きのうたてた作戦どおり、
あきらめないで 100メートルをさいごまで
はしりつづければ、おいぬけるのではないかと
懸命にはしった。
もしかしたら、とおもったのに、
もしかしなかった。4位。
ほかの競技でも、おじさんたちはつよかった。
リレーでも全力疾走して、それでケガもしない。
いったい、あのひとたちは
ふだんどんな生活をおくっているのだろう。
わたしは ゆっくりとはいえ
わかいころから つねにからだをうごかし、
毎日ストレッチもかかさないのに、4位。
わたしぐらい丹念にウォーミングアップをした選手は
絶対にいないはずなのに、4位。
わたしほどふだんからだをうごかしている人間が、
たかだか地区の運動会で断トツのビリになるのは、
これはもうすごいことではないか。
よほど特殊なトレーニングを
ながい期間にわたり 地道につみあげたとしかおもえない。
ゆっくり力とでもいおうか。
球いれ競争の招集がおわり、
地区ごとにならんで出場をまっているひとたちの会話がおかしかった。
あるおじさんは、ネコなで声で子どもたちにはなしかけていた。
「ねえねえきみたち、玉をいれたい?
もしなんだったら、したにおちた玉を
おじさんやおばさんにわたしてくれない?」
子どものちからでは 玉をなげても
たかい場所にあるカゴまでとどきにくいので、
子どもが玉をひろい、おとながなげるという分業を提案したのだ。
おとなはずるいなー。
「風はあっちからか」と
風むきを気にしているおじさんもいた。
玉いれ競争じたいが もともと
けっこう真剣勝負につくられている。
30秒ずつ、2回おこなうのに、2回目は対角線の場所に移動して
できるだけ公平な条件できそうルールだ。
テニスやサッカーじゃないのだから、
サイドをかえるのにどれだけ意味があるのだろう。
地区の運動会のディープさが、玉いれ競争によくあらわれている。
「おしどり二人三脚」もみていておもしろかった。
招集所でたのしそうにはなすカップルと、
ふたりがぜんぜんべつのことをかんがえていそうなカップル。
すごく仲のいいカップルは、がっちりと肩をくみ
すごいスピードではしりぬけていく。
わたしひとりがはしるよりもあきらかにはやい。
仲のわるい夫婦よりも、まったくの他人のほうが
はしりやすそうにおもえるけど、
二人三脚がきっかけに、ふたりの仲が
すこしはもとにもどるかもしれないので、
やっぱり夫婦がいいかも。
なかなか微妙な競技だ。
開会式では来賓のあいさつがながかったし、
閉会式は、競技別の表彰があり、
30分くらいグランドにたたされた。
地区の運動会は、もう67回もつづいているそうで、
親睦をふかめるはたらきが それなりにあるとしても、
わたしは これをさいごに できればもう参加したくない。
あれほどねんいりにアップしながら、
断トツでビリの4位だったのをぬきにしても、
わたしには なじみにくいもよおしだった。