『家族の軌跡 〜3.11の記憶から〜』(大西暢夫:監督)
大震災で家族をうしなったひとたちの
はなしをきいてまわった記録だ。
なにかテーマがあってマイクをむけるのではなく、
震災の日、そしてその後に、
どんなおもいをしているかを ひたすらききつづける。
インタビューとちがい、きき手は
自分のしりたい話題をたずねたりしない。
相手のはなしをひきだそうと
ときどきことばをはさむ程度で、
被災したたひとたちの気もちをしずかにきく。
映画としてのストーリーがあるわけではなく、
クライマックスもない。
はでさはなく、地味な仕事だけど、
こういうやり方でしかできない記録がある。
被災したひとの記憶を ひとつひとつたずねてまわると、
そのつみかさねが貴重な記録になっていく。
だれかがやらなければ うもれてしまい、
しだいにわすれられていく。
おおきなガレキの山を たくさんのひとびとが
手作業で分別していた。
気のとおくなるような仕事におもえるのに、
数年かけて、山はだんだんちいさくなり、
ついにはすべてのガレキがしわけられた。
仕事にあたった地元のひとたちは、
ガレキがただのゴミの山ではなく、
かつてはともに生活していた
おもいでの品々であるとしっている。
いっしょに仕事をしながら からだをうごかし
おしゃべりをたのしみ、いろんな情報をえる。
たくさんのボランティアが援助にかけつけたとはいえ、
こんなふうに地元のひとたちが、自分たちの手で復興をすすめたから、
震災から5年たったいま、かなりの程度
くらしぶりがもとにもどったようにみえる。
それでも ひとびとの胸のうちをきいてあるけば、
どうしようもないかなしみに
いまもくるしんでおられるのをしる。
今回の上映会は、わたしがつとめている職場が企画したものだ。
震災から5年たったいまだから、
なおさら意味をもつ作品であり、
タイムリーな上映会となった。