秋からまた放映されるようになった
「世界入りにくい居酒屋」をたのしみにみている。
いろんな国の いろんな町にある居酒屋(食堂)が紹介され、
スタジオでみている女性ふたりが
テキトーにおしゃべりするだけの お気らくな番組だ。
国はちがいながら、どの店もにたような雰囲気で、
こんなお店にいってみたいとおもわせる。
おおくの店に共通しているのは、
店長が朝から夜おそくまではたらき、
土地の伝統料理をやすい値段で提供し、
常連客でいつもにぎわっているところ。
番組のルールがよくわからない。
番組がおわるころ、「そろそろオーダーを」と声をかけられ、
スタジオのふたりが 料理かお酒をえらぶわけだけど、
えらんだからといって、かならずそれがサービスされるわけではない。
きめるのは あくまでも番組制作者なのに、
なんでいつも「そろそろオーダーを」なのだろう。
そしてもうひとつ。
ひととおりお店を紹介したあと、
「(ここに)はいれそうですか?」と
スタジオのふたりがはなしあうのだけど、
こたえは「はいれそう」にきまっていて、
じっさいふたりとも「はいれる」「はいりたい」をくりかえすわけで、
わかっていながら いつもおなじながれがまもられているのが不思議だ。
このよく意味のわからないとりきめが
番組がめざす方向性を なんとなくあらわしている。
どんな料理をえらぼうとも、
たとえ えらんだ料理とちがうものがでてきても、
そんなのはどうでもいいはなしだだ。
今回でてきた料理とお酒を ざっとふりかえる意味で、
ああでもない、こうでもないと、
ふたりがはなすのに意味がある。
お店にはいれるかどうかだって、
ひとつの話題を提供しているだけであり、
ほんとうにはいれるかどうかをたずねているわけではない。
スタジオのふたりも、それらをよく理解したうえで、
野暮なつっこみはせずに、ただたのしそうに
「おいしそう」「これ、ぜったいおいしいわ!」
をなんどもくりかえす。
「世界入りにくい居酒屋」は、
料理番組でも、旅番組でもないポイントをねらい、
しきいをぐっとひくくして、
みるひとが ただ気らくに「おいしそう」と
たのしんでくれるようにつくられている。
旅行さきで「入りにくい居酒屋」にめぐりあえたらしあわせだし、
自分のすむ町にも、あんなお店がないものかとおもう。
地域ならではの伝統料理や、
母親がつくってくれたような なつかしい味を、
おどろくような量と値段で提供してくれる店があれば、
あまり外食をしないわたしだって、
月にいちどはいきたくなるだろう。
いい店がお客をつくるのか、
いい客がお店をそだてるのか、
番組にでてくるお店は、どこも よくにた雰囲気だ。