『おなかのすくさんぽ』
(片山健・福音館書店)
図書館の子ども室をあるいていたら、
『この本読んで!』という よみきかせの情報誌があり、
片山健さんを特集していた。
片山さんの絵本といえば
『どんどん どんどん』や「こっこさんシリーズ」を
むすこによみきかせたもので、
この特集では『おなかのすくさんぽ』が紹介されていた。
いつもながら迫力のある絵に、よんでみたくなる。
『おなかのすくさんぽ』にでてくる男の子は、
『どんどん どんどん』とおなじ子なのだそうで、
片山さんのむすこさんがモデルだという。
男の子がどろだらけになって くまやいのししなど
山の動物とあそびまくる。
さんざん山や洞窟を探検したあと、
さいごには、川でみずあそびになり、
からだをきれいにしたところで、
「ちょっとだけ なめていーい?」と
男の子は動物たちにせがまれる。
「ちょっとだけだよ」と
くまやいのししになめさせてやると、
はじめはペロリだったのが、だんだんあまがみにうつり、
へんな雰囲気になってきた。
やがてみんなのおなかがグーグーなりだす。
野性のどうぶつたちと、男の子の関係が
なんだかあやういかんじになるのがたのしい。
『おなかのすくさんぽ』をよんでもらった子は、
おとなからの愛情をたっぷりうけとった満足感から、
おなかがいっぱいになるのではないか。
大冒険のあと、家にもどって
お母さんとお父さんにだっこされ、
安心しきってあまえられたらすてきだ。
むすこがまだちいさかったころ、
『どんどん どんどん』をよみきかせしたら、
なきだしてしまった。
男の子がすさまじいいきおいで
どんどんあるいていくエネルギーに圧倒されたのだとおもう。
ゴジラみたいな怪獣があばれたり、
核戦争がはじまったみたいな荒野を
男の子がどんどんあるきつづけたるのだから、
あの絵本をよんでもらってよろこぶには、
そうとうなちからが必要かもしれない。
ほかにもむすこがなきだした例では、
『千と千尋の神隠し』がある。
むすこにせがまれ ふたりでみにいったら
(わたしはすでにみおえていた)、
はじまってまもなくの場面で 千尋の両親が豚にかわっていき、
それがむくすこはこわくてなきだしてしまった。
この場面は、町ぜんたいがあやしげな雰囲気になり、
いかにもおっかないものがたりに 千尋がふみこんでいきそうだ。
むすこでなくても なきだすのがただしい反応かもしれない。
とてもこのままみつづけられるようすではないので、
ほんの15分か20分みただけで席をたつ。
いちどみていたとはいえ、
ふたり分のチケット代はやすくはなく、
かなり残念なおもいで映画館をあとにした。
すぐれた作品は、ときには子どもをなきださせてしまう。
絵本や映画に なきだすほどの
ゆたかな感受性をそなえていたむすこは大学生となり、
たっぷりと親からの愛情をうけとったせいか、
大器晩成型らしい おだやかな人生をあゆんでいる。