2016年11月14日

『泣いたの、バレた?』酒井順子さんによる 男たちを対象にした女性学講座

『泣いたの、バレた?』(酒井順子・講談社文庫)

酒井さんは以前、気のよわい女はいない、と
男たちにおしえてくれた。
今回の『泣いたの、バレた?』では、さらにつっこんで、
男にはわかりにくい女性の気もちをあかしてくれる。
この本のタイトルから想像されるのは、
小保方さんの釈明会見だろう。
酒井さんは小保方さんがひらいたこの会見を
「失敗だった」とみている。
オボちゃん(小保方春子さん)というのは、ヤワラちゃん以來、久しぶりに登場した「女に嫌われる女」であるわけですが、彼女達は何故そうなのかというと、女子校的環境にいたことがないせいで「女性の視線管理」に慣れていないためではないかと思われる。(中略)
対してオボちゃんはまた、泣き方も「メイクを崩さずに泣く」という女ウケしないもの。天に向かい、思いを噴出させるように泣いた真央ちゃんとの印象は、かなり違いましょう。

卵子老化の項では、
「(妊娠)したいのは山々!啓蒙するなら男性をしてほしい!」
というのが、多くの女性達の意見かと思います。何せ女性は、役割としてはキャッチャー側であるわけで、ピッチャーが「投げる気ないっす」「面倒臭いっす」といっているのに、
「さあ来い!」
とミットを叩いても、虚しいだけなのですから。

女性にミットをたたかせるなんて、
いまのわかい男たちはなにをやっているのか。

ロンブー淳さんをしとめた女性について、
酒井さんならではの視線で分析をくわえている。
様々な浮名を流したロンブー淳さんが結婚したお相手は、今時珍しい貞女。夫が何時に帰ってきても起きて待っているし、もしも夫が浮気をしたら「一緒に反省する」というのです。
その話を聞いて、男女の反応は分かれることでしょう。(中略)そして女性の場合は、「すごいテクニックだ!」と思うのです。
それはすなわち、嫁テク。(中略)
ぼーっとしているだけでは決して結婚できない現代において、テクニックを隠さずに嫁の座を獲得しようとする女性というのは、むしろスポーツマンのようで清々しい、と。
「確かにそうね。それも、ロンブー淳のように、結婚しても幸せになれるかどうかわからない人とあえて結婚するというのは、相当な猛者なのかもしれない」
「ていうかさ、色々な人が挑んでも結婚までいかなかった男性を前にした時、彼女のアスリート魂に火がついたんじゃないの?」

わたしだったら、おそくまでまってくれるのは、
うれしいよりもプレッシャーだし、
浮気を「一緒に反省」されたら
ギャーッとさけんでしまいそうだ。
酒井さんは「すごいテクニック!」と
まったくこころをうごかさないで、
嫁の座をいとめた女性のテクニックを、冷静にみやぶり、
アスリート魂と位置づける。

酒井さんによる女性心理の解説がなければ、
女うけしない泣き方がどのように失敗だったかとか、
ロンブー淳さんをしとめた女性を
「すごいテクニックだ!」
というふかいよみは、わたしにはとうていできなかっただろう。
週刊現代に連載されている酒井さんのこのエッセイは、
男たちが気づかない女性の心理を 親切におしえてくれる。
中年のおじさんよりも、わかい男たちにこそ
このシリーズに目をとおしてほしい。

posted by カルピス at 22:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 酒井順子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする