児童文学の評論家である清水真砂子さんが、
朝日新聞の書評欄で紹介していた。
昨シーズンのイングランド1部リーグで
奇跡とよばれる優勝をはたしたレスターの本拠地がこの本の舞台だ。
レスターはインドからの移民がおおい町で、ホームゲームでは、
ターバンをまいた観客がたくさんうつっていたという。
日本代表の岡崎慎司選手の名前をださず、
移民の町としてのレスターに注目するあたり、
清水さんの斬新な目のつけどころにいつも感心する。
もっとも、本の内容はサッカーと関係なく、
主人公の少年ハーヴェイが、「おいぼれミック」と
いい関係をつくっていくはなしだ。
ミックは 移民がふえたために、
レスターの町がすみにくくなったとおもっている頑固な老人で、
ハーヴェイは、そんなミックと はじめのうちは対立しながらも、
しだいにミックのかかえるさみしさに気づいてゆく。
さきほど、ターバンをまいた観客についてふれたけど、
ターバンは、シーク教徒だけが頭にまくもので、
「訳者あとがき」によると
インドにおけるシーク教徒の比率はわずか2%にすぎない。
インド人といえばターバンだとおもっているのは
かなりかたよったイメージだ。
もっとも、
「現在、海外にいるインド人の3分の1が、なんと、シク教徒」
というから、
日本人がインド人=ターバンとおもいこむのもしかたない。
主人公のハーヴェイがかたるには、
インドでは、人口の大半を占めるヒンドゥー教徒達が、今もカーストというきびしい身分制度にしばられている。そのカースト制度を完全に否定したのがシク教で、身分に関係なく、だれもがみな平等という理念を持っているんだ。
おっかなそうにみえるシーク教徒たちが、
そんなすばらしいおしえにみちびかれるひとたちだったとは。
よみながら、はなしがスムーズにながれすぎる気がしたけど、
ミックとさいごにはいい関係がむすべたのも、
シーク教のおしえをいかす、
ハーヴェイと彼の家族ならではかもしれない。
清水さんは、ロンドンに ムスリムの市長が誕生したと紹介している。
イギリスというと、EUからの離脱をえらんだことから、
保守的なながれをイメージしがたいだけど、
『おいぼれミック』にみるように、
そしてムスリムの市長が生まれるように、
あらたなうごきが着実におきている。
この本をよんでいると、
異文化をうけいれるのがにがてな日本の将来を、
どうしてもおもいうかべる。