『ラオス 山の村に図書館ができた』
(安井清子・福音館書店)
ラオスの難民キャンプで、子どもたちに
人形劇をみてもらうNGOにかかわっていた安井さんは、
その仕事がおわったあとも、図書館支援の活動をつづける。
いくつかの偶然のであいをへて、
安井さんは山のなかにあるゲオバトゥ村に
図書館をつくろうときめた。
人形劇を公演した経験から、
子どもたちにはものがたりが必要なんだと
安井さんは確信している。
安井さんが図書館づくりにとりくむのも、
夢中でものがたりにひたれる場所を提供し、
子どもならでの時間をすごしてほしいからだ。
きれいな図書館をつくり、贈呈式をして感謝され、
でもじっさいにはそのあとだれもつかわないという
「箱モノ」援助におわらないよう、
安井さんは村のひとといっしょに材料となる木を調達し、
大工しごとにも参加してもらい図書館をたてていく。
また、たてものをプレゼントするだけでは
図書館の活動がつづかないので、
図書館にかかわる村の人をそだて、
村のひとたちによる図書館運営をめざす。
図書館とはなにか、がしられていない村で、
ゼロから図書館をつくっていくのは
どれだけたいへんだっただろう。
安井さんはしかし、たいへんさよりも
じゅうじつした時間をすごせたよろこびについて
おおくをかたっている。
でなければ、電気・ガス・水道のない村でのくらしを
ながくつづけられなかっただろう。
安井さんは国際援助のノウハウをよく理解されており、
やりたいことをしながらも けして無理はしていない。
村にとどまりつづけるだけでなく、ビエンチャンへでかけたり、
日本にもどったりしながら 息のながい活動としてとりくみ、
数年かけてこの図書館づくりを成功させた。
ゲオバトゥ村は、こんな地域がまだのこっているのかと
感心するぐらい むかしながらの生活をいとなんでいる。
女性は家の仕事だけでなく、畑や家畜の世話にいそがしい。
ひとがあつまる場所ではたらくのは タブーとなっている 。
ちいさな子どもたちでさえ、おとながいわなくても、
自分からすすんで家の手つだいにたずさわる。
そんな村に図書館ができたことで、
世界にはいろいろな国と さまざまなくらしがあると
村のひとたちがしり、おおきな刺激となったにちがいない。
安井さんは大学生のころから難民支援にたずさわり、
それいらい夢を実現させるために、地道な活動をつづけてきた。
ゲオバトゥ村のひとたちが 自慢におもえる
すてきな図書館をつくったあとも
安井さんはラオスにとどまって、
子どもたちへの支援にとりくんでいる。
国際援助の成功例というよりも、
自分がやりたかった夢を、すこしずつ実現させていった
貴重な記録として 興味ぶかくよんだ。