本屋大賞のノミネート作品が発表された。
10冊のうちに、芥川賞を受賞した
『コンビニ人間』(村田沙耶香)もはいっている。
まえから村田沙耶香さんの作品に関心があったので、
話題作をもとめる小市民性に抵抗をおぼえながら
わたしも『コンビニ人間』をよんでみた。
このごろのいい方であらわせば、「ふつうに」おもしろい。
わたしは文学にうとい人間であり、
この作品にひめられているであろう
なんらかのメッセージはよみとれなかった。
かいてあるとおりにストーリーをおいかけて、
そこにある具体的な事象が おもしろいか おもしろくないか、だけだ。
『コンビニ人間』の特徴は、わたしがみるところ、
コメディのおもしろさだ。
おもてむきはごくフツーの女性が、
コンビニ・ゾンビへとかわっていく過程を
丁寧にえがいた小説、とだれかが評価したら、
わたしはおおきくうなずいただろう。
芥川賞というので、かたい本かと身がまえていたのに、
そっちかい!みたいなかんじ。
ものすごくあさいよみ方なのだろうけど、率直な感想だ。
本屋大賞は、全国の本屋さんにつとめるひとたちが、
お客さんにいちばんうりたい本をえらぶ賞だという。
選考委員ではなく、現場で本とお客さんにせっしている
書店員の投票というやり方がおもしろい。
とはいえ、残念なことに わたしとこの賞はあまり相性がよくない。
これまでに受賞した13作をみると、
よみおえたのは
第1回目の受賞作『博士の愛した数式』(小川洋子)
第4回(2007年)『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子)
第9回(2012年『舟を編む』(三浦しをん)
の3作品にとどまっている。
『夜のピクニック』(恩田陸)、
『東京タワー〜オカンとボクと、時々オトン〜』(リリー・フランキー)、
『天地明察』(沖方丁)は、とちゅうでなげだしてしまった。
どちらかというと、ノミネートされたものの、
大賞にはとどかなかった作品のほうが
わたしにはおもしろくよめる傾向がある
(『東京タワー』の次点だった『サウスバウンド』(奥田英朗)、
『天地明察』がえらばれた年の『神去なあなあ日常』(三浦しをん)と
『猫を抱いて像と泳ぐ』(小川洋子)など)。
ただ、どの本も、本屋大賞だから、あるいは
ノミネートされたからよんだのではなく、
すきな作家の本だから手をだしたにすぎない。
そうした事実からみると、本屋大賞うんぬんは、
わたしにとってほとんど意味をもたない。
10冊のノミネート作品すべてに目をとおしていたら、
わたし個人のはっきりした感想がかけるれど
(まさに「個人の感想です」)、
よんだ数冊のみで◯◯がいちばん、とは断定できない。
書店員さんのこのみはさまざまと、おもうしかない。
ほかの賞だったら、芥川賞をとった作品を
わざわざ大賞にえらんだりしないだろう。
ただ、本屋大賞は あくまでも投票による順位づけなので、
あんがい『コンビニ人間』がさいごまでのこるかもしれない。
ほかの9冊に、『コンビニ人間』をこえる作品がないとはおもえないし、
どうせなら賞に縁のなかった方が受賞したほうが
わたし個人の感想としては よろこばしい。