『ジャンゴ 繋がれざる者』
(タランティーノ:監督・2012年・アメリカ)
タランティーノ作品では、
ひきがねがいつだってとてもかるい。
まさかこのタイミングで、と
気もちの準備ができていないうちに銃がうたれる。
タマが発射されると、ひとのからだは
かんたんに穴があいてしまうし、
血や内蔵がどばっとあふれでる。
それでいて、あと味がわるくないのがこの作品の特徴だ。
なにしろ壮大な復讐の映画だから。
黒人が奴隷として人権をうばわれている時代。
白人に善意を期待しても、なにもかわらないと絶望し、
自分と妻をつらい目にあわせてきた白人たちへ
ジャンゴがいかりを爆発させるラストが圧巻だ。
わたしは『ヘイトフル・エイト』のあとにこの作品をみた。
共通点がいくつか目につくので、
どうしてもふたつの作品をくらべてしまう。
作品の舞台が、アメリカ南北戦争の前後
(『ジャンゴ』は2年まえで、『ヘイトフル・エイト』は
戦争がおわってから数年後)と
ほぼおなじ時代設定になっている。
どちらも賞金かせぎが重要な存在で、
どちらも黒人への差別意識がふかくからんでいる。
上映時間も165分と167分と、だいたいおなじ。
つづきものでないのが不思議なくらいだ。
もちろん、共通点があるからといって
内容がにているわけではない。
まったくちがうおもむきの作品であり、
どちらもそれぞれにおもしろかった。
銃の暴力性で秩序がなんとか維持されている社会に
黒人差別がからむ。
『ジャンゴ』はとくに奴隷制時代の白人が、
どれだけひどい存在だったかがえがかれている。
史実そのままではないとはいえ、
白人への復讐にむかうジャンゴが
正義のヒーローにみえてくる。
サミュエル=L=ジャクソンは、
タランティーノ作品の常連さんのようだ。
『ジャンゴ』では、白人にべったりよりそい、
あたまがからっぽで、白人以上に黒人を軽蔑している
たまらなくいやなタイプの農場監督なのが、
『ヘイトフル・エイト』では、黒人への差別をゆるさない
たたかう黒人としての登場だ。
もうひとり、『イングロリアス・バスターズ』に
いくつものことばをはなすドイツ人将校の役ででていた
クシルトフ=ヴァルツがいい演技をみせている。