『わたしのワンピース』(にしまきかやこ・こぐま社)
まいにちかよう職場に(あたりまえか)
『わたしのワンピース』をよんでくれと、
しょっちゅうわたしにもとめてくるひとがいる。
ご期待にこたえ、できるだけ よませてもらうのだけど、
わたしにはこの絵本のよさがまったくわからなかった。
絵がそんなにうまいとはおもえないし、
ストーリーだってたいした起伏があるわけではない。
よんで、といわれるから いわれるままによむわけだけど、
自分からすすんでとりだしたくなる絵本ではない。
なぜこの絵本がこんなにこのまれるのか、
ずっと不思議におもっていた。
なにしろ、1969年の12月に第1刷がでてから、
職場にある本は2006年11月に第140刷されたものだ。
定番の絵本がどれくらいすられているかよくしらないけれど、
140刷はたいへんな人気といっていいのではないか。
本にかかれているのは、うさぎの女の子がワンピースをつくるはなし。
女の子のうえに、まっしろなきれが、ふわふわっとおちてくるのが
ものがたりのスタートとなる。
その子はそのきれでワンピースをつくろうときめた。
女の子は自分ひとりで(登場人物は この女の子だけ)
ミシンをカタカタうごかしながら、ワンピースをつくる。
ワンピースのもようは、女の子がでかけるさきの景色をとりいれて
とりや くさのみに かわっていく。
雨がふってきたり、夕やけをみているうちに、
なんだかねむたくなってきて、
目がさめたときは 朝になっていた。
女の子は、おひさまにおはようをいう。
最近になって気づいたのは、女の子が安心しきって
景色がかわるのを たのしんでいるようすだ。
雨がふり、虹がでてきて、夜空をとんだりと、
まわりの景色とともに、
ワンピースのがらが どんどんかわっていく。
やがて女の子は つかれてねむってしまう。
目をさますと、またおひさがのぼり、
まっさらなつぎの日がはじまっている。
みじかいものがたりのなかに、
いろんなできごとがもりだくさんで、
さいごは あたらしい いちにちをむかえておわる。
この絵本をよんでもらった子どもたちは、
にぎやかなできごとにわくわくしながら、
つかれてねむったあと、またいちにちがはじまる展開に、
みちたりた気分になるのではないか。
絵がうまくないなんて、絵本をみている子にとって、
たいして重要ではないのだろう。
というようなはなしを、
いぜん幼稚園の先生をしていた同僚にはなすと、
いまの子は、『わたしのワンピース』より
うごきのあるものがたりを このむ傾向にあるとおしえてくれた。
かつての定番だからといって、
いまも絶大な人気をたもっているわけではないようだ。
どんな本にも賞味期限があるだろうから、
1969年にだされた『わたしのワンピース』が、
まえとはちがうよまれ方をするのは あたりまえだ。
ただ、わたしに「よんで」とせがむ方のように、
すきなひとからは いまも絶大な支持をあつめている。
ひとによって、なんどもよみたくなる この本の魅力に、
わたしはやっとちかづけた気がする。