2017年03月16日

いまさらながら『蹴りたい背中』(綿矢りさ)

『蹴りたい背中』(綿矢りさ・河出文庫)

いまさらながらの『蹴りたい背中』。
金原ひとみさんとの芥川賞ダブル受賞が
おおきな「事件」だったせいか、なんとなく手をだせずにいた。
朝日新聞に連載された『わたしをくいとめて』をよんでから、
綿矢りささんが気になってきた。

わたしがいうまでもないけれど、とてもうまくかかれている。
わかくなければかけない高校生活を、
綿矢さんならではの世界観で形づくる。
経験豊富な作家をおもわせる構成力があり、
なによりも、おもしろくよませる。
河出文庫の解説は、斎藤美奈子さんによるもので、
出版された2007年当時から別格のあつかいだったのがわかる
(そりゃそうだ。「事件」だったのだから)。

教室で孤立している生徒のはなしは、これまでになんどかよんだ。
この小説の「彼女」は、クラスメートにいじめられているのではなく、
自分から彼らをとおざけている。
そこらへんの分析は、斎藤さんが解説でじょうずにときあかしている。
すこし紹介すると、
「『青春』が苦手な」青春小説、
という斎藤さんのとらえ方が、中心人物のふたりにぴったりだ。
本文もいいけど、解説がまたすばらしく、
一冊まるごとでたのしめる。
国語のテキストとして おすすめしたい。

「web本の雑誌」の「作家の読書道」によると、
綿矢さんは小学生のころから
たくさんの本をよんでいる。
すきな作品は、くりかえしなんどもよむ。
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi08.html
吉本ばななさんの「キッチン」は小学生以来、数え切れないくらい再読しました。これは私の中でも最多再読記録かも。ほんとに何度読んだかわからない。もう暗誦できるくらいです。

たくさん本をよんできたひとだけが
すぐれた文章をかける。

『蹴りたい背中』だなんて、
かわったタイトルだとおもっていたけど、
よみおえると、これ以上のタイトルはない。
にな川くんは、卒業するまでに
あと何回くらい背中をけられるのだろう。

posted by カルピス at 21:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする