いまさらながらの『蹴りたい背中』。
金原ひとみさんとの芥川賞ダブル受賞が
おおきな「事件」だったせいか、なんとなく手をだせずにいた。
朝日新聞に連載された『わたしをくいとめて』をよんでから、
綿矢りささんが気になってきた。
わたしがいうまでもないけれど、とてもうまくかかれている。
わかくなければかけない高校生活を、
綿矢さんならではの世界観で形づくる。
経験豊富な作家をおもわせる構成力があり、
なによりも、おもしろくよませる。
河出文庫の解説は、斎藤美奈子さんによるもので、
出版された2007年当時から別格のあつかいだったのがわかる
(そりゃそうだ。「事件」だったのだから)。
教室で孤立している生徒のはなしは、これまでになんどかよんだ。
この小説の「彼女」は、クラスメートにいじめられているのではなく、
自分から彼らをとおざけている。
そこらへんの分析は、斎藤さんが解説でじょうずにときあかしている。
すこし紹介すると、
「『青春』が苦手な」青春小説、
という斎藤さんのとらえ方が、中心人物のふたりにぴったりだ。
本文もいいけど、解説がまたすばらしく、
一冊まるごとでたのしめる。
国語のテキストとして おすすめしたい。
「web本の雑誌」の「作家の読書道」によると、
綿矢さんは小学生のころから
たくさんの本をよんでいる。
すきな作品は、くりかえしなんどもよむ。
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi08.html
吉本ばななさんの「キッチン」は小学生以来、数え切れないくらい再読しました。これは私の中でも最多再読記録かも。ほんとに何度読んだかわからない。もう暗誦できるくらいです。
たくさん本をよんできたひとだけが
すぐれた文章をかける。
『蹴りたい背中』だなんて、
かわったタイトルだとおもっていたけど、
よみおえると、これ以上のタイトルはない。
にな川くんは、卒業するまでに
あと何回くらい背中をけられるのだろう。