『フィリピン』(井手穣治・中公新書)
セブ島へ旅行したのがきっかけで、フィリピンへの関心がたかまった。
ガイドブックによる情報だけでなく、
もっとつっこんだフィリピンの概況をしりたくて
目についたこの本をもとめる。
自分でいうのはなんだけど、
旅行へいった地域について、日本にもどってからでも
しろうとするのは たいへんいいこころがけだ。
よんだ、といっても、ものすごく大雑把な読書で、
著者の井手穣治氏にもうしわけないレベルでしかない。
さいわい、この本はフィリピンの入門書としてよくまとめられており、
フィリピンにくらいわたしでも おもしろくよめた。
章だては、
・「アジアの病人」からの脱却
・高度成長の源泉
・飛躍を継続するための課題
・植民地時代の負の遺産
・フィリピン政治の実情とゆくえ
・地政学でみるフィリピン、そして日本
となっており、この一冊でフィリピンの歴史と現状、
そして将来の展望が ざっとつかめるようになっている。
ほんの4泊5日にすぎないセブ島旅だったけど、
・英語がよくつうじる
・どこへいってもひとがたくさんいる
・スペイン植民地時代の影響
という印象をもった。
英語については、ホテルなどの観光関係につくひとだけではなく、
安食堂や町の小売店でもふつうにはなされており、
外国からの投資をひきよせる フィリピンの魅力となっている。
ひとのおおさについては、「人口ボーナス」の恩恵として
フィリピンの将来性とつよくむすびついている。
わたしがなんとなくかんじた印象について、
そのどれもが、本書にはとりあげられている。
旅行者のいだく第一印象は、あんがいはずれていないようで、
じっさいに現地へいってみる大切さをかんじる。
フィリピンについてのジョークで、
どこかの国の政治家が、わたしだったら◯年で
自分の国を先進国なみに発展させる、といったところ、
フィリピンの政治家は、
「わたしなら◯年で電気のない時代へあともどりさせる」
と豪語したはなしを きいたことがある
(もちろんジョークだろうけど)。
クーデターをおこした軍人への処罰が、
うでたてふせ◯回、という小話も どこかでよんだ。
フィリピンらしいゆるさをかんじるので 記憶にのこっている。
そんなふうに、フィリピンといえば、
まずしさや たびかさなる革命をイメージしやすかった。
マルコス大統領をたおした革命は、
日本でもおおきくとりあげられたけど、
そのあとも「アジアの病人」として とりのこされてきた。
2016年にドゥテルテ政権がうまれ、
アメリカにたいしてつよ気の発言が関心をあつめている。
フィリピンの魅力をしったものとして、
フィリピンのうごきに目がはなせなくなった。
本書は、フィリピンのこれまでとこれからについて、
目くばりのいきとどいた、またとない入門書となっている。
セブ島旅行でスタートした わたしとフィリピンとの関係は、
本書により、もう一歩さきへすすめそうだ。