2017年03月25日

またまた いまさらながら『インストール』(綿矢りさ) 

『インストール』(綿矢りさ・河出文庫)

『蹴りたい背中』がよかったので、
こんどは綿矢さんのデビュー作『インストール』をよんでみる。
これもまたおもしろかった。
文学的なことはわからない。
エンタテインメントとして、
はやくさきをよみたくなるおもしろさ。
いまさらわたしがほめてもしかたないけど、
金原ひとみさんと芥川賞を同時に受賞したときは、
わかくて美人だから話題になったのではなく、
すばらしい才能の出現にまわりがおどろいたのだ。

17歳の女の子が、なんとなく学校にいかなくなり、
親との関係も煮つまっている。
もうどうにもならなくなったとき、
たまたまであった小学生の男の子から、
エロチャットで風俗嬢になりすまし、
ひともうけしようと はなしをもちかけられる。
私、女子高生として、旬は旬なりの決断をくださねばならない。(中略)
「やらせていただきます。」
すんなり言った。口がそう動いた。もういいや。

青春小説に冒険小説のおもしろさがくわわり、
そのうえ なんとこの作品は再生のものがたりだった。
小学生のお母さんに風俗チャットがばれ、
「私」のお母さんも、彼女が学校にいってないと
しばらくまえからしっていた。
ふたりのコンビは30万円をかせいだところで 解消となる。
彼女は小学生の相棒にいった。
「努力しなさいよ。私も学校行くから。何も変われてないけど。」

すべてがぶちこわしになると、
これまでとらわれていたなんやかやがどうでもよくなり、
不思議とつぎのステップへすすむ気もちになっている。
エロチャットがふたりの再生につながるとは、みごとだ。

『蹴りたい背中』をブログにかいたとき、
斎藤美奈子さんの解説がすばらしいと紹介した。
http://parupisupipi.seesaa.net/article/448031365.html
この本もまた、本編もいいけど、高橋源一郎氏の解説がひかる。
絶賛といっていい内容だ。
綿矢りさは、この「時代」と「日本語」に選ばれたのだ。間違えてはならない。彼女が選んだのではない。だとするなら、彼女は、これからも書き続けなければならないだろう。だってね、そんな作家、他に、いないんだから。

綿矢りさ さんの本にであえたしあわせを
いまさらながら よろこびたい。

posted by カルピス at 16:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする