『蹴りたい背中』がよかったので、
こんどは綿矢さんのデビュー作『インストール』をよんでみる。
これもまたおもしろかった。
文学的なことはわからない。
エンタテインメントとして、
はやくさきをよみたくなるおもしろさ。
いまさらわたしがほめてもしかたないけど、
金原ひとみさんと芥川賞を同時に受賞したときは、
わかくて美人だから話題になったのではなく、
すばらしい才能の出現にまわりがおどろいたのだ。
17歳の女の子が、なんとなく学校にいかなくなり、
親との関係も煮つまっている。
もうどうにもならなくなったとき、
たまたまであった小学生の男の子から、
エロチャットで風俗嬢になりすまし、
ひともうけしようと はなしをもちかけられる。
私、女子高生として、旬は旬なりの決断をくださねばならない。(中略)
「やらせていただきます。」
すんなり言った。口がそう動いた。もういいや。
青春小説に冒険小説のおもしろさがくわわり、
そのうえ なんとこの作品は再生のものがたりだった。
小学生のお母さんに風俗チャットがばれ、
「私」のお母さんも、彼女が学校にいってないと
しばらくまえからしっていた。
ふたりのコンビは30万円をかせいだところで 解消となる。
彼女は小学生の相棒にいった。
「努力しなさいよ。私も学校行くから。何も変われてないけど。」
すべてがぶちこわしになると、
これまでとらわれていたなんやかやがどうでもよくなり、
不思議とつぎのステップへすすむ気もちになっている。
エロチャットがふたりの再生につながるとは、みごとだ。
『蹴りたい背中』をブログにかいたとき、
斎藤美奈子さんの解説がすばらしいと紹介した。
http://parupisupipi.seesaa.net/article/448031365.html
この本もまた、本編もいいけど、高橋源一郎氏の解説がひかる。
絶賛といっていい内容だ。
綿矢りさは、この「時代」と「日本語」に選ばれたのだ。間違えてはならない。彼女が選んだのではない。だとするなら、彼女は、これからも書き続けなければならないだろう。だってね、そんな作家、他に、いないんだから。
綿矢りさ さんの本にであえたしあわせを
いまさらながら よろこびたい。