2017年04月09日

『ビア・ボーイ』(吉村喜彦)サントリーの缶ビールがのみたくなる

『ビア・ボーイ』(吉村喜彦・新潮社)

NHK-FMでしたしんできた吉村喜彦さんの
「音楽遊覧飛行〜食と音楽で巡る地球の旅〜」
がおわり、さみしくなった。
番組のかわりに、吉村さんの著作をよんでみる。
『ビア・ボーイ』は、かきおろしの小説で、
酒造会社の宣伝部につとめていたエリート社員が、
地方都市の営業にとばされる場面からはじまる。
吉村さんは以前サントリーにつとめておられ、
この小説は、サントリーのビールをめぐる「実話」のようだ。
ただ、会社の名前はサントリーがスターライト、
キリンがライオンなどへ かえてある。

主人公の上杉は 正義感がつよく、
まがったことのできない男としてえがかれている。
「食と音楽で巡る地球の旅」の吉村さんは、
だじゃれをとばしたがる、かなりかるめのおじさんだ。
上杉とはまるでちがうキャラクターにおもえるけど、
わかいころの吉村さんは 上杉のように
酒と仕事を愛する まっすぐなひとだったのだろう。

サントリーのビール部門は、
これまで瓶ビールをおもな商品として位置づけ、
販売にちからをそそいできたけれど、
キリンなど老舗の壁はあつく、ビールのシェアはなかなかふえない。
社内には派閥がうまれ、社長派は社長がそだてた瓶ビールを、
副社長派は、ビールには将来性がないからと、
いずれもこれまでどおり瓶ビールを支持し、
缶ビールへのきりかえに消極的だ。
上杉は、とばされた広島でちからをつけ、
缶ビールを主力製品とするよう会社にはたらきかける。

いまでこそビールといえば缶ビールだけど、
缶がひろまるまでは 紆余曲折があったのだ。
宣伝がじょうずなサントリーは、
缶ビールにおしゃれな雰囲気をもたせるのに成功した。
そのサントリーにしても、内部であんなゴタゴタがあったとは。
仕事小説としては、あまり気もちをかきたてられなかったけど、
ビールからみたサントリーの内情として 興味ぶかくよめた。
よみおえると、プレミアムモルツをすかさずかった。

ノーテンキな音楽ではじまる
「食と音楽で巡る地球の旅」がなつかしい。
吉村さんの番組を、はやくもまたききたくなった。

posted by カルピス at 21:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする