2017年05月06日

『アカペラ』(山本文緒)わたしがすきな家出のものがたり

15歳のたまこが72歳の「じっちゃん」と家出するはなし。
よんでいて、わたしは家出ものがすきなのに気づいた。
家出をすれば、たいていはロードムービーになる。
わたしはロードムービーもすきなのだ。
ほんとうは、家出ではなく「かけおち」なのだけど、
ジャンルわけとしては「家出もの」としてくくれる。

家出するからには、それなりの事情がある。
たまこの父親は家にまったく意識のないひとで、
母親もときどき家出してしまい、たよりにならない。
たまこは15歳だけど、両親がいなくてもしっかり生きているし、
「じっちゃん」とふたりだけのほうが
おちついてくらしていける。

じっちゃんとかけおちしたのは、
じっちゃんが老人ホームにいれられそうになったからだ。
だれだってそうだけど、きらいなひとといっしょにいたら
おちついてくらせない。
じっちゃんは、たまこのお母さんがいっしょでは、
気がやすまらず ボケの症状がでてしまう。
たまこのお母さんは、じっちゃんをボケ老人あつかいして、
なにか失敗するとひどくいじめる。
たまこは、自分とふたりなら、
じっちゃんがなんでもできるとしっているので、
中学を卒業したら、じっちゃんとふたりだけでくらそうと、
進路をバイトさきの古着屋にきめ、
学校の進路調査に「就職」とかいてだした。

わたしの義父に認知症の症状がでると、
本人の気もちとは関係ないところで
まわりが老人ホームへのはなしをどんどんすすめた。
身内でも、そんな残念なはなしがじっさいにあったので、
たまこがじっちゃんとふたりでくらそうとしたのがうれしかった。

そうはいっても、中学生の女の子が、
おじいさんとふたりでくらしていくのを
だれもがかんたんにはみとめないわけで、
たまこの担任も、高校だけはでておけと、
無難な生きかたをアドバイスしようとする。
この先生がまたいい味をだしてくる。
『アカペラ』にリアリティをもたらしているのは、
世間を代表する立場として先生がいるからで、
でも この先生は だんだんとたまこのちからになっていく。
ラストがきれいにおさまり、いい気もちでよみおえる。

この小説をおしえてくれたのは、
北上次郎さんと大森望さんによる『読むのが怖い!Z』だ。
絶賛してあったので よみたくなった。
このように、ふるい書評を参考に本をえらべば、
お金をかけずにおもしろい本を手にできる。
たとえば、『本の雑誌』のふるい号をひっぱりだすと、
すごくおもしろそうに「最新刊」が紹介してある。
最新号の書評だと、たとえおもしろくても図書館で
かりるわけにはいかないけど(まだはいってないか、
人気があってかりる順番がこない)、
ふるい本ならたいてい図書館で手にはいるだろう。
ブックオフでも100円コーナーにならぶ可能性がたかい。
ふるい書評にたよるのは、いいことばかりだ。

posted by カルピス at 19:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする