2017年05月15日

北上次郎さんのミステリー時評3部作を注文する

「本の雑誌」に「図書カード3万円使い放題!」という企画がある。
作家を本屋さんにつれていって 3万円分の図書カードをわたし、
ほしい本をかってもらう。
かいものにあたり、どんな方針で本屋さんにたち、
なぜその本をえらんだのかを かいてもらう企画だ。
うれてる作家でも、3万円の図書カードはうれしそうで、
たいていのひとが この企画をもってこられると
冷静さをわすれ まいあがった姿をみせる。

わたしに3万円分の図書カードをくれるひとはいないけれど、
自分でかってに3万円分のかいものはできる。
そうおもいつつ、なかなか実行できないからこそ、
この企画がよろこばれるのだろう。
プレゼントされた図書カードは、
本ずきにとって 格別なよろこびとなる。

デイリーポータルZにも「勝手に食べ放題」という企画があった。
お店が企画するたべ放題でなくても、
おなかいっぱいになるまで「勝手に」注文すればいいのだから、
ほんのすこし日常から足をふみだすだけで
わりとかんたんに実行できる。
ただ、そうやって「食べ放題」しても、
おなかがいっぱいにはなるものの、精神的な充実感はとぼしいようで、
おなじ「勝手に」やるのなら、
わたしも「図書カード3万円」のほうをえらびたい。

北上次郎さんの著書に『勝手に!文庫解説』がある。
文字どおり、依頼されてもいない原稿を
自分から勝手にかいた解説をあつめた本だ。
たのまれもしないのに解説をかきたくなるくらい、
その本について ひとこといいたいわけで、
どの解説もすごくおもしろい。
この本のなかで、北上さんは
ご自分でかかれた書評集についてふれている。
「小説推理」にかいているミステリー時評をまとめたもので、

『冒険小説の時代』(1978年〜1983年)
『ベストミステリー10年』(1984年〜1993年)
『極私的ミステリー年代記』(上下巻)(1993年〜2012年)

の3冊にわかれている。
この3冊をよめば、
「35年間の翻訳ミステリーの状況が、一応わかる仕組みになっている」
というからすごい。

翻訳ミステリー16冊にふれた『勝手に!文庫解説』だけでも
よみたい本がゾロゾロでてきたし、
その作家がかいたほかの作品もおさえようとすると、
16冊がさらに芋づる式でふえていく。
そのうえに、ミステリー時評3部作をくわえると、
わたしのしらないおもしろ本が、
いったい何冊になるのか見当もつかない。
わたしは、財宝のつまった宝箱にであったのかもしれない。

ブログだってほんとうは「勝手に」かいているわけで、
わたしもよんだ本をよくとりあげるけど、
ささやかな「感想」であり、「解説」とはまったくべつものだ。
北上次郎さんの『勝手に!文庫解説』は
正確な知識と ほうふな読書経験があって はじめてかけるもので、
その本がなぜおもしろいのかを
ご自分のこのみをからめて ふかくほりさげていく。
わたしは、こんな書評集がよみたかったのだ。
じゅうじつした老後の生活にむけ、
さっそくアマゾンで 3部作を注文した。

posted by カルピス at 22:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする