活字中毒者は、どのような旅行をすればいいかを
座談会で提案してくれるという。
いかにもおもしろそうな企画だけど、残念ながらすべってしまった。
あまりにも漠然としたテーマすぎるのか、特集の焦点がさだまらない。
「本好き」と「旅行」をからめた
活字中毒者ならではの企画とならず、もったいなかった。
黒田信一氏による「旅のガイドブックガイド」がおもしろかった。
いくつもでているガイドブックについて「ガイド」したもので、
よくしられている「地球の歩き方」もでてくる。
黒田氏は、『地球の歩き方・中国自由旅行』の表紙に、
「一日1500円以内で旅ができる」とかかれていたのにひかれ、
現金2万円をもって中国へと旅だった。
1987年、黒田氏が32歳のときだ。
広州、上海、桂林、マカオと弾丸のように回って10日後、香港経由で東京に戻って来た。手元に残っていたのは、1万2000円であった。中国本土での交通費、宿泊代、飲食費、物価の嵩む香港での滞在費を差し引いてのこの残額。おおっ!と声をあげた。『地球の歩き方』は正しかったのである。
黒田氏によると、『地球の歩き方』のよさは、
紹介されている安宿の数がおおいことで、
弱点は、
「とにかく安あがりを主題としているために、
お土産や食事の情報が貧弱な点だ」
としている。
これは、わたしの感想とまったく逆で、
以前はともかく 最近の「歩き方」は
たかいホテルと高級レストランの紹介がおおく、
やすく旅行をしようとするものにとって あまり役だたない。
なによりも、かなりかさばるし、おもたいしで、
このごろは必要な情報だけをコピーし、
メインのガイドブックは
ほかの出版社からえらぶようになった。
ネット時代となり、それ以前のガイドブックから
方針をかえていこうとするのは当然で、
これからますます なにかの情報に特化していくだろう。
黒田氏が中国をまわった1987年は、
くしくもわたしが中国を旅行した時期とかさなっている。
わたしも香港から広州にはいり、桂林をかすめて
雲南省にはいった。
「一日1500円」での旅行はほんとうに可能で、
もっとケチれば500円でも滞在できた。
正確な金額はおぼえていないけど、
田舎にいけば宿代が200円、食事は一食が100円あればたりるし、
バスでの移動はものすごくやすかった。
30年まえの中国は、まだ開放されていない地域がおおく、
広州でさえあかぬけない町におもえたのに、
2ヶ月ほど雲南省をまわって広州にもどると、
どれだけほかの町とちがう都会なのかにおどろいたものだ。
たとえば、広州以外の町では冷蔵庫をほとんどみかけず、
ぬるいビールがあたりまえだった。
冷蔵庫があっても、嗜好品をひやす場所ではなく、
あくまでも食品をくさらせずに保存するいれものだった。
中国は、あれから急激な発展をつづけ、
ニュースでながれる町の映像をみると、日本よりも都会にみえる。
1987年に中国を旅行しておいてよかった。