2017年07月02日

『マイ・インターン』デ=ニーロのあらたな魅力

『マイ・インターン』
(ナンシー=マイヤーズ:監督・2015年・アメリカ)

70歳のベン(デ=ニーロ)は、妻をなくしてから3年がたち、
おだやかな日々のくらしに感謝しながらも、
仕事に熱中していたころをなつかしくおもいかえす。
退職してから いろんなところへ旅行にいったし、
外国語の勉強にとりくんだりもした。
自由な時間はたっぷりあるけれど、
いいかげん、そんな悠々自適の生活にもあきてきた。
いまは なにかその日にするべき用事を 毎日さがしている。
あたらしく生きがいとなる なにかがほしいと、
ファッション通信サイトの会社がよびかけた
シニア=インターン制度に応募する。
女性のボス(アン=ハサウェイ)のもとにつかえる
みならいとして配属がきまり、
あたらしい職場でのあたらしい生活がはじまった。

うまくいきすぎている、という批判もあるようだけど、
ハサウェイとデ=ニーロの魅力がいっぱいで、
すてきな作品にしあがっている。
とくにデ=ニーロは、70歳の老人をえんじながら、
おだやかな笑顔であたらしい魅力をみせる。
こんな役ができるひとだとは、おもわなかった。
これまでに、いろんなタイプの役をこなしてきた
デ=ニーロならではの、ボーナス作品といっていい。
ハサウェイもすてきだ。
やり手の社長だけど、会社をおおきくしたのちも
仕事への熱意をたもちつづけ、まわりへの配慮もおこたらない。
『プラダを着た悪魔』で上司をつとめた
メリル=ストリープとはまったくちがうタイプで、
よわさもみせるし 自信のなさもときどきのぞかせる。
人間味にあふれた彼女だから、ベンのもちあじを評価できた。

この作品は、セリフとして生き方をかたってはいないけれど、
けっきょくひとは礼儀ただしさが大切であるし、
誠実に生きなければ、なにも蓄積されないとおしえてくれる。
デ=ニーロの作品から 誠実さをまなぶとは へんなかんじだ。
70歳になったとき、わたしはベンのように
ゆたかな表情でひとをはげませられるだろうか。
自分の人生を肯定できるからこそ、
ベンは自信をもって 自分の価値観をまわりにかたりかける。

ほかのスタッフから相談をうけたとき、
「エリのついた服をきていったほうがいい」とか
「ハンカチはひとにかすためにある」など、
ゆたかな経験にうらづけされた具体的なアドバイスをベンはおくる。
そんなひとことを、まわりはもとめている。
誠実に生きてきたベンだから、
自信をもってアドバイスをおくれるし、
まわりもそれをききいれようとする。
ネットにかんする知識はすくなくても、
男として大人の会話ができるし、
相手へのおもいやりもかかさない。
ベンのおだやかな笑顔をみているうちに、
わたしもまたあたたかな気もちで生きたくなった。
すなおにみれば、とてもいい気分にしてくれる作品であり、
そうおもえないというひとがいたら、
『プラダを着た悪魔』のほうがあっているかもしれない。

posted by カルピス at 21:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする