角田光代さんのエッセイをよんでいたら、
トイレにまつわるはなしがのっていた。
家の便器がこわれたので、あたらしいのをかうと、
乾燥ボタンがついてなかったそうだ。
角田さんは、おしりを電気でかわかすなんて、
さほど必要な機能におもえなかったので、
不人気な乾燥機能が淘汰されたとおもわれたようだ。
じっさいは、角田さんが
たまたま乾燥機能のない便器をえらんだだけで、
半分ほどの機種にはいまも乾燥ボタンがついているらしい。
そうしたマクラから、角田さんがわかいころ旅行した
アジアのおおくの国では、おしりを手であらったものだと、
テーマであるトイレのはなしにはいっていく。
そういえば、このごろはアジアへでかけても、
手でおしりをあらわなくなった。
宿には洋式の便器ばかりがおいてあり、
トイレットペーパーもついている。
わたしの旅行スタイルがかわり、
やすいゲストハウスにとまらなくなっただけが原因ではなく、
個室には西洋便器が基準になりつつある気がする。
バスで長距離を移動するときの休憩所には、
アジア式のトイレがあるので、
まったく目にしないわけではないけど、
やすい宿でも洋式トイレがふつうにそなえつけてある。
ただ、トイレに紙がつまるのをふせぐために、
おしりをふいたトイレットペーパーは、
トイレにおいてあるゴミ箱にすてるのが基本なので、
日本人としては、すこしひっかかる。
水のながれもいまひとつで、なかなか便器がきれいにならない。
こんなことなら 手と水でおしりをあらうほうが気もちいい。
以前は、アジアを旅行していると、おおくの国で
どうしてもおしりを手であらわなければならなかった。
便器のよこにおいてあるオケから容器で水をすくい、
おしりのうしろ側から水をかけながら、
まえから手をまわしておしりをきれいにする。
なれてくればとまどわなくなるし、あんがい気もちがいい。
注意しなければならないのは、ネパールやインドなど、
トイレのない家がおおい地域をあるくときで、
気をつけないと、ウンコをふんづけてしまいそうになる。
ネパールでトレッキングをしていたら、
うつくしい景色とウンコがセットになっている場合があり、
あやしそうな場所では用心が必要だった。
ただ、そとでウンコをするのは、ある種の快感があり、
せまくてきたないトイレよりも
気もちよく用がたせるのもたしかだ。
わたしは、日本で野良仕事をしているとき、
がまんできなくなって、外でなんどかウンコをした。
ひとにみられないように、と
コソコソおおいそぎでするのではなく、
みはらしのいい丘のてっぺんで のんびり腰をおろしたのは
すてきな経験だった。
人口密度のたかい都会では まず味わえないよろこびだろう。
もっとも、ひとの目を気にしつつ、
という状況のほうが刺激的ですきだ、という意見もあるかもしれない。
そとでするトイレは あんがいおおくのひとが
秘密の体験をもっており、話題がなくなったときにたすけてくれる。
まだこころみたことがない方は、
いちど外でおしりをさらしてみるよう おすすめしたい。