地区の運動会がおこなわれた。
体育委員をやってるので、必然的に参加しなければならない。
きょねん、100メートル競争でビリになった記憶がまだあたらしい。
そもそも、わたしは運動会にいいおもいでがない。
小学校のときから、短距離がおそくて、
運動会ではいつもビリにちかいほうだったし、
小学生として参加した地区の運動会では、
リレーでわたしがバトンをおとしたため順位をさげた。
体育委員になってまだ2年めなので、
まわりの顔になじみがなく、わたしの存在は完全にういている。
さいわい、競技観察係をおおせつかったので、
本部テントにつめる時間がながく、
地区のひととあまり顔をあわせなくてもよかった。
競技観察係は、なまえがりっぱなだけで、
じっさいはたいした権限があるわけではなく、
ただたっているだけに かなりちかい。
リレーでは、グランドのあちこちに紅白の旗をもってたち、
OKなら白旗を、ダメなら赤旗をふって合図する。
小学生がはしるところをみていると、
短距離は、完全にセンスがものをいう世界なのがわかる。
はやい子は、学年がひくくてもかっこいいはしりをするし、
おそい子は おさないころから
ギクシャクとしたうごきを身につけている。
わたしも、子どものころ すでに
いまのはしりが完成していたのだろう。
女性が出場するレースでは、
必死にはしりる女性のうつくしさに胸をうたれた。
いいかげんにながすのではなく、
一生懸命にはしりながらも、うつくしさをたもっている。
お化粧もしてるみたいだし、髪のセットもみだれない。
『ルパン三世カリオストロの城』では、
スパイとして潜入している不二子ちゃんにルパンが
「仕事に熱中してるご婦人ってのは、うつくしいねー」
という場面がある。
たしかに。
気どらずに、全力をつくしている女性は、ハッとするほどうつくしい。
男だって、けっこう本気で運動会にうちこんでいる。
閉会式では、不本意な成績に満足できなかった男性が、
放心状態となり、式のとちゅうで列をはなれ、
自分たちのテントへもどっていくのをみた。
まわりのひとは、どう声をかけようかとこまっていた。
わたしの地区でも、ながいあいだ体育委員をしているひとは、
地区の成績に本気でこだわっており、
委員になって2年めのわたしなど、まったくおよびでない存在だ。
運動会にさきだつ準備会では、
たかだか運動会とはいえない雰囲気のもとで、
2どのうちあわせがもたれ、選手選考に知恵をしぼっている。
参加できるひとにおねがいする、というよりも、
かてるひとをどう確保するかが選手選考会なのだ。
運動会というよりも、選手権レベルの意気ごみなのがすごい。
すごいけど、わたしとはずいぶんちがう価値観の世界であり、
なんかいかかわっても なかなかなじめない。