裏日本って、じつは魅力的な場所なんじゃないの、という、
酒井さんによる裏日本の再発見が一冊にまとめられている。
「表」の繁栄にかくれ、ひっそりとくらい印象のある裏日本だけど、
これからはその後進性こそをひとびとがもとめるかもしれない。
冒頭には、酒井さんがはじめて山陰本線にのったときのおどろきが
のべられている。
「鄙びている」を通り越して、日本海はあくまで澄んだ青、山々は緑、海山の間に建てられた家並みは統一感があって・・・と、ほとんど絶景の連続です。「こんな場所が日本にあったとは」と、私は思いました。
島根にすんでいるわたしは、日常的にこうした風景にせっしている。
あたりまえすぎて、なんともおもわない景色が、
「表」にすんでいるひとにとって、
おどろくべきうつくしさにうつるとは。
これこそが、すんでいるものには気づきにくい、
「裏」の魅力なのだろう。
酒井さんが石川県の旅館「加賀屋」をたずねると、
三代目の会長がこうはなしている。
裏日本が、表のようになったってしょうがないんです。かつて、明るく華やかな観光地を人びとは目指したけれど、これからはそうじゃないでしょう
今はもう消えてしまったもの、たとえば五右衛門風呂とか蚊帳とかね、そんなものを揃えて、その名も「裏日本」なんていう旅館をつくったら面白いだろうなぁと、これは商売人としても思いますね
ついでに、風呂にいれる水もじぶんで井戸からくみ、
マキをたきつけて湯をわかす体験もくみこんだら
人気がでるのではないか。
やったことのないひとには、マキに火はつけられないだろうから、
そこは旅館のスタッフが手だすけをする。
自分で「不便」のたのしさを体験できれば、
そうしたくらしが けして不便だけではないと気づくのでは。
酒井さんは、「日本海側美人一県おき説」を検証するために、
かつて青森から福井までの県庁所在地を調査している。
町をあるく女性が、美人か、そうでないかをカウントしてみると、
「一県おき説」がみごとに立証され、
なかでも秋田美人の健闘がめだった。
その3年後に、そのつづきとして、こんどは京都から福岡までの
日本海側の県における美人率をしらべている。
結果としては
はっきりした『一県おき』傾向は、西日本では見られませんでした。
島根は、とりあげられた6県のなかでは、
比較的たかいポイントをあげているものの(6.5%)、
平凡な数字にとどまっている(第3位)。
島根にすむものとしては、すこし残念な結果だ。
とはいえ、京都の4.5%よりも美人率がたかく、
東京でさえ、京都なみというから、
島根には美人がおおいと、いいきっておく。
表でなくてもいいではないか、と
いまをいきるひとびとがかんじるようになった。
光あるところばかりが魅力なのではない。
裏であるからこそのよさが裏日本にはあり、
これからは裏日本の時代、というよりも、
これからも裏ならではの魅力をうしなわないでほしいと、
酒井さんはねがっている。
わたしもまた、島根は島根でいいと おもうようになった。