(村上春樹・文藝春秋)
村上さんが20年のあいだにかいた、いくつかの紀行文をまとめたもの。
この本が出版されたのは2年前だけど、タイトルにひっかかってしまい
これまでほったらかしてきた。
「ラオスにいったい何があるというんですか」って、
ラオスにすごく失礼ないいかたではないか。
でも、よんでみると、
べつにラオスをひくくみているわけではなかった。
これからラオスのルアンプラバンにむかおうとするとき、
のりつぎをしたハノイで、
ベトナムのひとが村上さんにいったことばだ。
なんでもベトナムにあるのだから、
わざわざラオスになんていかなくてもいいのに。
でも、それが旅行というものなのでは。
20年もの期間にわたるのだから、いきさきはあちこちだ。
ボストンやアイルランド、それに日本の熊本もふくめ、
村上さんがたずねた10ヶ所の旅行記がまとめられている。
なかには『遠い太鼓』にでてきたミコノス島とスペッツェス島、
それにトスカーナ地方のように、再訪の記録もあり、
それはそれでなつかしい。
ありきたりないいかただけど、
とりあげられている町にいきたくなるは村上さんのうまさだろう。
なかでも、フィンランドのはなしがいちばんおもしろかった。
ヘルシンキで村上さんは、
カウリスマキ監督の兄弟が経営するバー
「カフェ・モスクワ」をたずねている。
基本的経営方針が「冷たいサービスと、暖かいビール」というから
かなりかわっている。
暗くけばい もろ60年代風の内装から、ジュークボックスの表に貼られた偏執的な選曲リストから、すべてが見事なまでにカウリスマキ趣味で成り立っている。
店にはいり、椅子にすわっても、従業員がだれも注文をききにこない。
店には、カップルの客が一組だけ。
この二人はフィンランド人の三十代初めくらいの男と、エストニア人の二十歳過ぎのちょっと色っぽい女の子のカップルで、かなりダウン・トゥ・アースな、みっちり下心に満ちた、濃い雰囲気を漂わせていた。このへんの客層もいかにもカウリスマキっぽい。本当に「内装の一部」といっても違和感のないようなお二人だった。
村上さんの比喩に いつも関心するけど、
この「内装の一部」もきまっている。
いくらまっても従業員がこないので、
村上さんはけっきょく「暖かいビール」すらのめなかったそうだ。
ボストンでの
そして言うまでもないことだけれど、あなたがボストンに来るなら、新鮮な魚介料理を食べに行くことは、チェックリストのかなり上段に置かれるべき項目になる。
もいい。
翻訳っぽい文章にすることで、
いかにも外国のガイドブックをみている気がしてくる。
そして、タイトルになっている
ラオスのルアンプラバンにはなにがあったのか。
率直にいって、あまり魅力のある記事とはいえなかった
(ホテルできいた民族音楽についてかたるときだけさえている)。
村上さんとアジアは、あまり相性がよくないのかもしれない。