地区のバス旅行として、岡山県の吹屋ふるさと村と、
高梁市にある頼久寺をたずねる。
参加者は18名。
こういう企画でもないと、おでかけの機会に
めぐまれないひとがいるかもしれない。
でも、それにしては だんだんと参加者がへっている。
遠足らしいはなやいだ雰囲気もなく、
どうかんがえても そんなにもとめられている旅行ではない気がする。
でも、いつもやっているのだから、
今年もまた いつものようにとりくまなくてはならない。
それが自治会の行事の真髄である。
そして、わたしは幹事役である行事部部長だ。
吹屋ふるさと村は、ベンガラの産地として有名らしい。
ベンガラとはなにか。
ウィキペディアをみると、
「硫酸鉄を高温で熱し、苛性ソーダで中和したもの」とある。
レンガ色の顔料で、布や磁器の色つけにつかわれるらしい。
とかいていても、わたしはまだピンとこない。
職場のひとに、ベンガラをみにいく、といったけど、
だれもしらなかった。
かつてベンガラの生産でさかえた町が保存地区となり、
おみやげ屋さんや郷土館にはさまれた
しずかなとおりをゆっくりあるく。
「ELEVEN VILLAGE」というゲストハウスもたっていた。
外国からのお客さんもくるという。
ここにこなければ、ベンガラについてなにもしらなかっただろうけど、
しったからといって、おおきな感動がうまれるわけでもない。
ある意味では、自治会からの旅行として、
これぐらいイメージにピッタリな訪問さきはないかもしれない。
じっさいにたずねることで、それまでしらなかった土地の
地理的な位置づけが記憶とむすびつくわけだけど、
自治会からの旅行は、たずねても、つぎの年にはもう
どこにいったのか、なにをみたのかわすれている。
わたしは、きょねん自治会からたずねた場所を
ほとんどおぼえていないのに気づいた。
わたしの記憶力の問題というよりは、
自治会旅行に特有な しずかに低迷する イベント性のたまものだろう。
高梁市の頼久寺は、庭園でしられるお寺らしい。
でも、じっさいに庭を目にすると、
これをみるためにわざわざこんなとおくまできたのかと、
ちからがぬけてしまった。
とくに手いれがゆきとどいているゆうではないく、
どこにでもありそうだ。
ここでもわたしは 自治会企画ならではの魔力をかんじることとなる。
頼久寺に個人的、あるいはすてきな女性と
しっぽりおとずれる機会はまずかんがえられない。
自治会旅行だけが ささやかな可能性をのこしている。
そして、わたしはドンピシャで、
その自治会企画としてここをおとずれた。
まことにめでたいマッチングといわねばならない。
ピピの誕生日をすませ、そしてつぎの日は
自治会からの日がえりバス旅行。
活気あるエネルギーを あらゆる方面から
残忍にからみとってしまう自治会企画への参加は、
日常とはなにかを、しっかりわたしにおもいおこさせてくれた。