イナモト氏のブログにのった
「アイロンがけの楽しみ」がおかしかった。
http://yinamoto.hatenablog.com/entry/2017/10/01/130820
イナモト氏は村上春樹さんの小説がにが手で、
なにが「僕がアイロンをかける工程は・・・」だ、と
やつあたりしておきながら、
そのアイロンがけがすきになってしまったと告白する。
しかも工程にそって仕事をすすめるというのだから
まさに村上式のアイロンがけだ。
わたしは、料理はするけど、アイロンがけをたのしむ素養はない。
おりめのついた服はきゅうくつだし、
スーツをきる機会など、いちねんにいちど
あるかないかなので、ワイシャツはぜんぶクリーニング店にまかせ、
自分でアイロンをかけたことがない。
もし、いくつかの工程にわけ、分業のように
手順をきめて仕事をすすめたら、
集中した たのしい時間になりそうだ。
とはいえ、村上さんの作品にかかれている
アイロンがけの工程をたどれば、
じょうずにアイロンがあてられるかというと、
きっとそこまで親切にはかかれていないような気がする。
このまえよんだ村上春樹さんの『騎士団長殺し』には、
面色さんがつくってくれた完璧なオムレツが登場する。
オムレツのつくりかたがかなりくわしくのべられているけど、
それにもかかわらず、フライパンにタマゴをいれてからの
だいじなポイントがはぶかれていて、
この本を参考にするだけでは みごとなオムレツにしあがらない。
また、一般的には氷をいれないシングルモルト・ウイスキーを、
あえてオン・ザ・ロックでのんだり、
そうかとおもえばスコッチを氷なしで、
チェイサーにミネラルウォターをたのむとか、
なにかのメッセージがこめられている場面がいくつかある。
わたしには村上さんの意図をよみとれず、
なぜシングルモルトに氷をいれるのかにひっかかったままだ。
『騎士団長殺し』には、村上さんの作品らしく、
もちろんアイロンをかける場面が登場する、と
断言しようとしたけど、記憶がたしかではない。
アイロンをかけ、スパゲティをゆで、さっと料理をする場面が
ほかの作品と、ごちゃまぜになっているのかもしれない。
そうした日常のひとコマが、こまかくかかれていると、
なんとなく村上作品っぽくなる。
それではあまりにも安直なので、わざとつくり方をぼかして
行間に意味をこめるのが村上作品の特徴となっている。
うんちくをかったりしない。おとし穴をさりげなく配置し、
つくり方はあくまでもかるくながすだけだ。