まえの職場で、しばらくいっしょに仕事をしていた元同僚と、
いちにち松江市内を「観光」した。
そのひとは、あるくのがすきで、
通勤はもちろんあるきだし(往復1時間)、
昼やすみにも職場をぬけだしてあるき(45分)、
やすみの日も、土日のいずれかはあるき、
外をあるかないと 調子がくるうのだそうで、
とにかくなにかにつけてあるく。
いかにもおもしろそうな日常なので、
いつかいっしょにあるけたら、とおもっていたところ、
きょうはちょうど条件がかさなり、
6時間半をいっしょに市内観光ができた。
そのひとは、純粋にあるくのがすきなだけで、
体力づくりが目的ではないし、あるくスピードや
何万歩あるいたかというデーターにも関心がない。
いちにち外をあるかないと、おちつかなくなるそうで、
なんだかおよがないと死んでしまうマグロみたいだ。
きょうは、「あるき」の極意をおしえてもらおうと、
あるきながら インタビューみたいにいろいろききだした。
じっさいに、いっしょにあるいてみると、
かなりのはやあるきで、時速6キロくらいのスピードだ。
おとずれた場所での滞在時間をさしひくと、
きょうは3時間30分をこのスピードであるいた。
ペースが安定してくると、これくらいはやくあるいたほうが
リズムをとりやすく、つかれもかんじない。
・県立美術館
・塩見縄手
・地ビール館
の3ヶ所をおとずれる。
余暇支援として、市内をあるいていると、
観光地をかすめてとおることもおおく、
そんな場所では当然ながら観光客がたのしそうにあるいている。
イメージによわいわたしは、いかにも観光地という場所を、
いかにも観光客という顔をしてあるき、
ビールをのんで休憩というのをやってみたかった。
それがわたしにとっての観光であり、休暇であるとともに、
適度にからだをうごかす理想的な余暇活動でもある。
県立美術館では、「夢の美術館」という企画を開催中だ。
休館中の北九州市立美術館と福岡市美術館から
有名な作品のコレクションをかりてきての企画で、
島根では みる機会のとぼしい名画にふれる機会となる。
おおげさにいえば、ルーブルが島根にきてくれたようなものだ。
村上春樹さんの『騎士団長殺し』を最近よんだので、
まえよりも 絵をたのしむ目がやしなわれたような気もする。
せっかくの機会なので、おとずれるチャンスをうかがっていた。
結果からいえば、せっかくよその美術館からかりてきた名画も、
わたしにピンとくる作品はなく、
とにかく美術館にいった、という事実だけが実績としてのこった。
秋になったからといって、『騎士団長殺し』をよんだからといって、
きゅうに絵が理解できるわけではない。
つぎにたずねた塩見縄手は、松江の観光スポットとして
かならずあげられる 有名なとおりだけど、
あるいてとおると、いかにもみなれた風景だ。
そんなにスペシャル感はない。
ただ、観光客とまじってあるけたのはうれしかった。
さいごにおとずれた地ビール館は、
その名のとおり、地ビールをのんで おみやげをかうお店だ。
わたしにとって イメージの「観光」にかかせない場所なので、
ビールを注文し、しばらくきょうのながあるきを おたがいにねぎらう。
そのあとは、出発点をめざして1時間半あるく。
夕方の5時半に わりあいげんきなまま、ゴールにたどりついた。
ほどよいつかれと、長年の夢がかなえられた充実感を味わう。
死ぬまでにしたい10のこと、を
真剣にリストアップしたことはないけど、
きょうのいちにちは、まちがいなく10位以内にはいるであろう
わたしのささやかなねがいだった。
夢の実現は、あまりおおくをのぞまなければ、
あんがいお手がるで、お金もかからないのかも。