山本文緒さんと伊藤理佐さんが、
結婚をまえになやむ わかい男女からの相談にこたえていく。
おふたりとも、わたしがすきな表現者だ。
たまたまこの企画でいっしょになったのではなく、
まえからなかがよかったみたい。
わたしがすきなひとどうしが、
おたがいにみとめあう関係だというのがうれしい。
「トイレの跳ねが耐えられない!」など、
よせられる相談はさまざまだ。
回答する側は、ふたりで相談してからこたえるのではなく、
質問によっては、ちがう方針のアドバイスとなるときもある。
おふたりとも、しっかりした生活者であり、
地獄をみてきたひとなので、ぬるいアドバイスなどおくらない。
まっとうに生きていくうえで必要な、
きびしい(ときにはつめたい)意見をきかせてくれる。
「猫を飼いたい」という 女性からの質問があった。
ネコをかいたいけど、結婚するかもしれない あいての男性は、
「世話ができない」
「動物と一緒に住むなんて信じられない」など、
まるでその気がない、というなやみだ。
伊藤さんは現実にネコとくらしているので、
当然ネコ側にたったアドバイスをおくるかとおもっていたら、
原理原則をおさえた きびしいかんがえをのべている。
ネコや犬はペットであり、家族ではない、
というのが伊藤さんの基本方針だ。
よくある「崖話」では
知らない人間とうちの猫だったら
そのひとが「うちの親 殺した」とかじゃないかぎり
人間の方 助けます
猫・・・しかも「まだいない猫」が
人間・・・しかも「今の彼氏」より
大事なはずが ありましぇん
そのあと、
「猫問題」じゃなくて「彼氏問題」では?
と喝破しているのがさすがだ。
ネコは動物であり、人間の命のほうがとうといにきまっている。
どちらか一方しかたすけられない場合、
人間をえらぶのが当然だ。
と、知識としては理解しているつもりでも、
じっさいに そんな場面にでくわしたら、
おそらくわたしは とっさにうごけない。
「ちょっとまってね」と、時間をかせいで
ネコがたすかる道を、なんとかして さがそうとするだろう。
伊藤さんを「しっかりした生活者」というのはこういう点だ。
やっていいことと わるいことが はっきりしている。
ネコとくらせないような男と いっしょになる必要はない、と
わたしならこたえるだろう。
ネコが万事であり、相性がわるいのだから、
いまのうちにわかれたほうがおたがいのためだ。
人間なんだから、なんとか自分で崖からはいあがりなさい。
「猫問題」ではなくて「彼氏問題」、
という伊藤さんのみたてが、きっとただしい。