2017年11月13日

寝床難民

すこしまえのブログで予告したとおり、
ピピのおしっこからにげようと、べつの部屋でこっそりねた。
夜なかになんどもおこされては、そしてそんな日がつづけば、
仕事にさしつかえるので、ピピにかくれて寝袋を用意する。
家庭内ショートステイで、俗にいう寝床難民だ。
結果からいえば、ピピはわたしの「かくれが」を
朝の4時にかぎつけて 枕もとで「わー」とないた。
いまさらしらばっくれてもしょうがないので、
ピピをだきよせて再会をよろこびあう。

ピピにだまってちがう場所でねるのは、
ひどいうらぎりにおもえて気がひけた。
もしわたしが愛するだれかをベッドでまってるのに、
そのひとがこっそりべつの部屋でねたら、
そうとうきずつくのではないか。
おなじことを、わたしはピピにたいしてやったのだ。
でもピピは、そんなわたしにたいしても、
あいかわらず全幅の信頼をよせてくれ、
あまえた声をだしながら鼻をこすりつけてくる。

ベッドをはなれての睡眠は、プチ野宿として
野宿へのあこがれをすこしだけみたしてくれた。
寝袋にくるまるのだから、さむくはないけど、
ペラペラの座布団をしたにしいただけなので
背中と腰がいたくなった。
野宿をするときは、寝袋だけでなく、
マットがどれだけ大切かをおもいださせてくれる。
これは、野宿伝道師のかとうちあきさんが、
野宿をかたるときに、かならずふれている重大なコツだ。
もっとも、かとうさんは、快適な睡眠をめざすのではなく、
なんとか一夜をしのげたらいいという 達人なので、
最小限のクッションと断熱をねらい、
市販のマットをしいているだけだ。
わたしはずいぶんまえに、
あつい座布団をならべたうえに寝袋をしいてねたことがある。
つかれのとれかたが ぜんぜんちがい、快適さにおどろいた。

梅棹忠夫さんは、『モゴール族探検記』のなかで、
じゅうじつした個人テントの大切さをのべている。
隊員ひとりひとりに個室となる個人テントを用意し、
そのなかにふかふかの寝床をつくる。
わたしたちは、昼間は共同テントに出勤して、仕事や食事をする。夜は各自の自宅に帰る。個人テントは、ナイロンとブロード、骨は軽金属のパイプでつくったすばらしい上等だ。わたしはその中に、ヘアロックのマットレスを敷き、さらに空気マットレスと毛布で、上等のベッドをこしらえる。その上に羽毛の寝袋をおくと、これならいくらでも眠れそうだ。わたしは自分の新しい家に満足する。(梅棹忠夫『モゴール族探検記』岩波新書)

・マットレス
・さらに空気マットレス
・そのうえに毛布

これだけつかってあついクッションをこしらえ、
さらに羽毛でつくった寝袋をのせるのだから、
よんでるだけでも そうとう居心地がよさそうだ。
この探検は、いまから62年もまえの
1955年におこなわれているのに、
すでに寝床づくりのノウハウが確立されている。
テントでの睡眠は、一夜をしのげればいいのではなく、
ながい期間にわたって調査をつづけられるだけの
快適さがもとめられる。

ピピのおしっこをさけようと わたしがつくった「ねぐら」は、
1955年のモゴール族探検でのテント生活にさえ およばなかった。
ピピがみつけてくれず、なんにちもあの部屋でねていたら、
おそらく体調をくずしていただろう。
つぎの日から トイレシートをしきつめたもとのベッドにもどった。
いつふとんにおしっこをされるかのリスクにおびえながら、
2017年の冬をすごしている。

posted by カルピス at 22:52 | Comment(0) | ネコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする