ゆうべは お得意さま宅へ、ボジョレー=ヌーボーをとどける。
職員ふたりがペアをくみ、10コースにわかれて市内をまわるのだけど、
なんねんもまえから、仮装しての配達がお約束になってしまった。
はじめは100均でかったサンタさんの服をきる程度だったのが、
だんだんとエスカレートして、
いまではまるでハロウィンみたいだ。
わたしは、デイリーポータルZの
「地味な仮装」というコンセプトに共感しており、
ふつうなら仮装しないであろう、
たとえばスタバの定員とか、交通誘導のひとを参考に、
きょねんはクロネコヤマトの配達員に「仮装」して、
それなりの評価をえた。
それから一年。
ことしはなにをしようかと、
ずっと頭にひっかかったまますごしていた。
で、最終的にきめたのが、
「回覧板をまわしている近所のおじさん」だ。
回覧の内容は、近所にボジョレーの配達をよそおった
家出ヤンキー少女が出没し、おしうりの被害がでているので、
みかけたときは、ご注意ください、にする。
わたしがおうちのひとに説明していると、
そこへヤンキー本人があらわれて おしうりをはじめる・・・、
というストーリーだ。
わたしは、普段着でいいし、
ペアをくんだ女性職員も、ヤンキーの仮装はやりたかったようで、
高1のむすめさんから制服をかり、シナイをかついで
迫力あるヤンキーを演出してくれた。
玄関のチャイムをならし、
「回覧板で〜す」と声をかけると、
「そこへおいといてください」と、
しごくもっともな返答をされるおうちがあった。
みたことのないヤンキーに、
冗談としりつつ、こわがってくれたひとがいた。
ボジョレーを1万円でかってくれ、
でないと家にかえれないとすごむのだから、
プレゼントをとどけにきた、というよりも、
子どもをなかす ナマハゲみたいだ。
さいごにたずねたお宅では、
ひとりさみしくすごしていたところに
わたしたちがやってきたので、大歓迎をうけた。
砂漠でたすけをまつところにあわれた 救助隊みたいだ。
おしゃべりをしたくて たまらなかったそうで、
おしうりをしようと、ボジョレーに1万円をふっかけても
「かいます かいます」と よろこんでくれる。
むこうのほうがはるかに役者がうえだった。
事業所にもどると、まだ仮装のままの職員が記念撮影をしていた。
男性職員の女装は定番ともいえ、
かわいい女子高生がいて、おもわず写真をとった。
かくれていたチャームポイントがひきだされ、
みんなが おもいがけないかわいさをみとめていた。
芸能界にくらいわたしは、なにに仮装しているのか
わからないペアもあったけど、
職員たちは、ボジョレー配達の仮装をたのしんでいるようだ。
普段着でのぞんだのはわたしだけで、
みんなの熱意になんだか水をさしている。
来年は変化球にたよらず、本格的な仮装をして、
究極の地味おじさんになりきろうとおもった。