2017年11月21日

残留あらそいにまきこまれているサポーターの心理

今年のJ1も、のこすところ あと2試合となり、
優勝と残留をめざしていくつものチームが
きびしいあらそいをくりひろげている。
優勝をほぼ手中におさめた鹿島、
でもまだあきらめてない2位の川崎、
ACL(アジアチャンピオンズリーグ)の出場権をめぐり、
3位あらそいのセレッソと柏、
ギリギリの残留あらそいで、
もはやかつしかなくなった清水・広島・甲府・大宮。

今年は3シーズンぶりに1シーズン制へともどっている。
どこかのチームがぶっちぎりで優勝したら
この時期の試合はおもしろみにかけるけど、
さいわいさいごまで優勝と残留のゆくえに
目がはなせない一年となった。
シーズンのはじめに波にのれなかった広島は、
けっきょくさいごまで残留あらそいにまきこまれてしまった。
とちゅうで監督が交代し、選手の補強もありながら、
きょねんまで優勝をあらそっていたチームが、
さいごまでピリッとしない。
優勝目前の鹿島にしても、石井監督がとちゅうで解任されたし、
ほかにも浦和・神戸・大宮・新潟と、
ぜんぶで6チームの監督が交代する異例のシーズンとなった。

朝日新聞の日曜日に連載ちゅうの
『ディス・イズ・ザ・デイ』(津村記久子)に、
応援するチームが残留するかどうかで
やきもきするサポーターの心情がえがかれており、胸にせまる。
忍は、ヴェーレ浜松が一部から二部に降格した試合をテレビで観る前、自分はどうだったかを思い出そうとする。試合の後にどうなってもいいように家事と仕事をすべて済ませ、部屋の掃除をして、お茶を淹れて、寒かったり暑かったりしないように部屋の空調を念入りに調整した。もちろん、忍も夫の和敏も一切予定は入れなかった。前日は二人で呑みながらだらだら別のチームのことを話し込んで、昼前に起きて、近所のレストランへ昼ごはんを食べに行って、キックオフの一時間前には買い物を済ませて自宅に帰った。

残留あらそいが意味する修羅場をしらないひとには、
いったいなにがどうしたので、こんなわかりにくい儀式が
えんえんとくりひろげられるのか 理解にくるしむだろう。
なにかをめざしているようで、なにかをさけているようでもある。
いったい、このふたりは、なにをもとめて
こんなややこしいうごきをするのか。
すごく念いりというか、集中というか、
逆に集中しないように気をそらすというか、
大切な試合まえのソワソワ感がすごい。
正面きって、おもいっきり応援するのではなく、
目のまえにせまった試合を、
ぜんぜん気にとめないようなふりをする。
でもほんとうは、そのことばかりをかんがえながら、
試合を意識しすぎないよう 最大限に気をくばる。
ふたりの息がぴったりなのも
夫婦というよりは、筋金いりのサポーターどうしであり、
こまやかな配慮がすさまじいまでにうかがえる。

自分のことなら だれもここまでしない。
個人の努力・がんばりでは、どうにもならないから、
はれものにさわるような、慎重きわわりない対応となる。
もはや、やれることはすべて手をつくした。のこるは神だのみだ。
自然界の秩序とバランスを、ほんのちょっとした不注意により
くずしてしまわないように、超人的な配慮のもと、
試合のなりゆきを、人知のおよばない、なにものかにゆだねる。
サッカーの神さまにほほえんでもらうには、
気をそらして、なにごともないようによそおうしかない。
愛にあふれたサポーターといえども、それしかできない。
でなければ、気まぐれな神さまは、
するっとむこうへとおりぬけてしまうのだ。

いまの時期、残留をめぐってあらそうチームとサポーターは、
忍と和敏の夫婦のように、最善をつくしたのち、
息をひそめながら さいごの試合をむかえるしかない。

posted by カルピス at 06:40 | Comment(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする