どこかの1行をひっぱってこようとしても、
いいくぎりがみつからないまま、
ずるずるとながい文章をうつしかねない。
たとえば、ほぼ日の「今日のダーリン」は、
いちにち分がそれほどながくない、
日記みたいなエッセイなのに、
そのなかには、おおきなテーマになりそうなはなしが
いくつも もりこまれている。
きょうの「今日のダーリン」は、
「矢野顕子さんが出演する番組に
ゲストみたいなかたちでおじゃましてきた」
ではじまる。
番組のなかで話題になった新曲は、
矢野さんと糸井さんが1981年につくった曲の
アンサーソングであるという。
あれから36年たち、曲のなかでうたわれているふたりは
その後どう生きたのだろう、
というのも、じつに魅力的な話題だ。
糸井さんは、そこから話題をよこにふって、
曲のなかのふたりに、矢野さんと自分とをかさねてみる。
ロミオことまさおくんと、ジュリエットのみどりちゃんの
人生の時計は、もちろん36年分も進んでいるけれど、
これ、矢野顕子とぼくの作曲作詞のコンビも、
それくらいの年月生きてきたということでもある。
どちらも健康で生きているから歌がつくれた。
もうちょっと言えば、ある程度の品質の歌を、
まだつくれるほどには現役でいる、ということでもある。
健康で、しかも現役として仕事ができるしあわせ。
しかし、はなしはそれでおわらない。
(糸井さんの)「しあわせ」みたいなものを、
ひとつずつ集めて献立表にしたら、
「矢野顕子との歌づくりが続いている」ということは、
とても太い文字で書かれているだろうなとね。
しあわせとは、なが生きしつつ、
よい友人と いっしょに仕事ができるすばらしさかも。
おわりのほうで、
こんどの『Soft Landing』というアルバムのなかでは、
他に2曲、矢野顕子依頼の「野球が好きだ」という曲と、
ぼくが勝手につくった、ある種のラブソング、
「夕焼けのなかに」という曲がある。
というから、それもまたききたくなってくる。
と、けきょく 引用だらけとなり、
むりにまとめようとすると、
本文の魅力がゴソッとぬけおちてしまう。
このように、糸井重里さんの文章は、
きれめがなく、どこまでもゆるやかにつながっていて、
チョコチョコっとあんちょこな引用をこばむところがある。
紹介しようとすると、かきだしから おわりまでの
すべてにふれなければ 全体の意味をつたえられない。
かんたんな文章にみせながら、じつに個性的で、
まねしようとしても すぐにボロがでてしまう。
全体がひとつとして 強力にまとまっており、
一部だけをかりてきても、鮮度をたもてない。
「今日のダーリン」をエバーノートにとりこみながら、
タイトル名をどうつけるのかに、いつもこまっている。