2017年11月29日

『鳩の撃退法』(佐藤正午・小学館)

『鳩の撃退法』(佐藤正午)をよみだしたらとまらなくなった。
というのはちょっとおおげさだけど、
すごくおもしろいのはたしかだ。
まだ上巻の2/3くらいをうろついており、
本来なら、紹介するのは はやすぎる。
でも、あまりにもケタはずれの小説なので、
さいごまでよみおえたとしても、ストーリーの紹介や、
気のきいた感想なんて わたしの手にあまる。
よんでるとちゅうでの紹介でも、
ぜんぜん問題ないとひらきなおった。

ここでかきたいのは、
キンドル版がでていてたすかった、というはなしだ。
『鳩の撃退法』を、はじめは図書館からかりてよみはじめた。
うかつなことに、しばらく「つんどく」してから手にしたので、
返却日までには とてもよみおえられそうにない。
図書館に延長をねがいでると、予約が2件はいっており、
はやくても1ヶ月はまたなくてはならない。
図書館の線はあきらめた。
できるだけはやく、いますぐにでも、 小説の世界にもどりたい。
どうしたものか。
すこしかんがえてみると、
わたしには3つの選択肢がある。

・本屋さんでかう
・アマゾンに注文する
・キンドル版をかう

本屋さんに、『鳩の撃退法』がおいてあるとはかぎらないし、
アマゾンに注文しても、すぐにはよめない。
キンドル版をかうしかなかった。
キンドル版があってよかった。

キンドル版は、80%オフの1118円でかえる。
本だと上下巻とも1998円で、文庫本にはまだなってない。
キンドル版がでてなかったら、
どれだけ味けない何日かになっていただろう。
いまは、ひるま職場にいるときから、
お風呂とねるまえの読書をたのしみにしている。
生活、というか意識が『鳩の撃退法』を中心にまわっており、
これだけのよろこびをあたえてくれた本はひさしぶりだ。

こんなぶっとんだ本はよんだことがない。
樋口毅宏さんの『さらば雑司ヶ谷』を、
もっとやすっぽいハードボイルドにしたかんじ。
「やすっぽい」は、けなしているのではなく、
佐藤正午さんでなければかけない魅力であり、
これまでよんだことのないタイプのおもしろさだ。
むだぐちばかりたたいているようで、
やがて発言のすべてがからんでくる。
なにげなくかたられているセリフの行間に、
こんなにいろんな意味がかくされているなんて。
ひとが口にすることばは、
ひとつひとつの意味をきっちりおさえていくと、
たくさんの情報がうかびあがってくる。
『鳩の撃退法』は、計算しつくしたものがたりの構成と、
いっけんなんのへんてつもない会話のつみかさねにより、
読者をいろんな場所へひっぱっていく。
この本のおかげで、わたしはしあわせな数日を手にいれた。
キンドル版でも、紙の本でも、
ぜひ手にとるようおすすめしたい。
もうすぐ文庫化もされるそうだけど、
わたしはとてもそれまで まてなかった。

posted by カルピス at 22:02 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする