『HANA-BI』(北野たけし:監督・1998年・日本)
大杉蓮さんがなくなった。
録画してあった『HANA-BI』をみる。
たけしがかっこいい。
独特の表情・姿勢・あるき方、
たたずまいのすべてが絵になる。
ちょっとくずしたスーツのきこなし、ちいさなサングラス。
口のはしっこを うえにもちあげるわらい方。
なにをやってもさまになる。
これだけ存在感のある俳優は そういない。
たけし主演でなければ なりたたない作品だ。
説明がなく、ストーリーがわかりにくいのに、
映画がはじまると、つよいちからでひきこまれる。
警察署で尋問する場面をみて、
やっとこのひとたちは刑事だったのかと理解した。
ヤクザと警察って、服装や話し方をふくめ、
けっこうにたような性格のひとがおおいのでは。
銃にふなれな日本社会において、
たけしみたいにためらいなく銃をぶっぱなしたり
ハシやら石やらを即興の武器になぐりつけたら、
先制攻撃になれてない相手はたいへんだ。
全編にちりばめられた暴力シーンが残酷なのに、
全体として、とてもしずかな印象をのこす。
へんないいかただけど、こころがきよめられた気がする。
わたしがかかえている問題なんて
とるにたらないことばかりだ。
たけしと岸本加世子のしずかな関係がよかった。
たけしはひたすら妻にやさしい。
妻は、ほとんどしゃべらないけど、
夫がそばにいてくれることに感謝している。
わたしも、死ぬまえは、こんな関係を
配偶者ときずきたいとおもった。
彼女はめったに口をきかないので、
しずけさについては いまでも準備オッケーだ。
愛する妻とふたりで、さいごの時間をひっそりとすごす。
最高だ。