2018年02月28日

『三人屋』(原田ひ香)

『三人屋』(原田ひ香・実業之日本社文庫)

ふるい商店街にある「ル・ジュール」は、
朝・昼・夜と、時間帯により 3つのお店にかわる。
店主は三人姉妹の朝日・まひる・夜月。
朝はモーニングをだす喫茶店、
昼はとびきりおいしいさぬきうどん店で、
夜は しめのごはんがうりもののスナックだ。
三姉妹とも美人で、それぞれの店に
熱心な常連客がついている。

web本の雑誌にのった原田ひ香さんの「作家の読書道」をよむと、
http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi191_harada/index.html
原田さんはたくさんの本をよんできただけでなく、
シナリオの勉強もされてきたそうだ。
そういわれると、原田さんの作品は、
いれものが あらかじめしっかりと設定されているようにおもえる。
三姉妹による形態のちがう3つの店や、
ふるい商店街の歴史やさびれ方など、
ものがたりをおもしろくするしかけがあちこちにおかれ、
そのなかで 登場人物が状況をいかしてうごきまわる。
ただ、うまいなーとはおもうものの、
でてくる人物が、自分たちでかってにうごきまわるほどの
のびやかさはかんじなかった。
はじめの設定をはみだすぐらい、
登場人物は自由にあばれてほしい。

5話からなる連作短編で、最終話で大団円におちついた。
すこしひねったなぞが伏線として配置されており、
そんなにうまくきまった、とまではおもわないけど、
さいごまでおもしろくよませてくれた。
ただ、原田ひ香さんの実力をもってすれば、
もうひとひねり期待したくなる。

夜月がいなくなったあと、
彼女のスナックをまひるがひきつぐのだけど、
夜月が客にだしていたようなぬけづけが
どうしてもつくれない。
いろいろ工夫してもだめなので、まひるはおちこんでいた。
夜月がもどってきたときに、
つけもののつくり方をたずねたら、
こたえはなんと「味の素をかける」だった。
おいしさの謎なんて、そんなものかもしれない。

posted by カルピス at 22:23 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする