マリは、Wカップ本番で日本とおなじグループにはいった
セネガルに似たタイプのチームとして、対戦相手にえらんだという。
アフリカの選手特有のつよいからだと、よくのびてくる足のうごきに、
けっきょく最後まで日本代表はとまどった。
はじめの15分は、日本もよくうごいていたけど、
それ以降はボーツをまえにはこべなくなる。
とくに、大島が負傷して山口にかわってからは、
しずかでおとなしい「攻撃」となってしまった。
センターバックの槙野と、ゴールキーパーの中村が、
ふたりで つづけて5回パスをくりかえした場面があり、
なんでまえにボールをおくらないのかイライラさせられる。
全体にみても横へのパスがおおく、
さほどかたいまもりともおもえないマリのブロックを
なかなかくずせない。
マリの攻撃は、個人技としての迫力はあっても、
精度がとぼしく、決定的なシーンはつくられない。
とおもって安心していたら、宇賀神がPKをあたえてリードをゆるす。
日本は、得点の予感がほとんどないまま、0-1で前半をおえる。
後半にはいり、本田や小林がはいっても、
試合のながれはかわらない。
印象にのこったのは途中からはいった中島で、
プレーもよかったけど、なによりも笑顔がすばらしい。
たのしくてしょうがない、という存在感が、
これまでの代表選手にはないものだ。
ほかの選手たちは、代表にえらばれたいという意識のためか、
サッカーをやらされているかんじ。
その意味では、マリの選手たちのほうが、
ずっとのびのびとたのしそうなサッカーだった。
4分のアディショナルタイムがおわろうとするころ、
三竿からのパスを中島がきめて、なんとか1-1の同点に。
収穫は、まけなくてよかった、につきる凡戦だ。
会場では、やたらとハトのむれがとんでいた。
ピッチにおりてエサをついばんだり、
いっせいにとびたってカメラの前をよこぎったり。
試合がおもしろくないせいか、ハトにばかり意識がいってしまう。
『ハトの撃退法』(佐藤正午)をよんでいなかったら、
あの本は、まさしくこういう場面をみて
タイトルをきめたとおもうにちがいない。
「ハトの撃退法」をしりたくなる試合内容だった。