朝日新聞に連載中の「ののちゃん」(いしいひさいち)が、
イベントをまつ時間のすごし方についておしえてくれる。
きょうのはなしは、いろいろ応用がききそうだ。
ののちゃんが
「ナツヤッスミッ ナツヤッスミッ」とうかれている。
松子さんが、
「なにをうかれてるねん。夏休みまで2週間もある」
とたしなめると、
ののちゃんは「そこなのよ」と、
なぜうかれているかの説明をする。
「『夏休み』の楽しみは『夏休み待ち』」だという。
「あと2週間もある。ナツヤスミッ マチッ」と
ののちゃんは夏休みまでのまち時間がたのしそうだ。
あと2週間もあって残念、ではなく、
2週間もたのしめるからラッキー、というとらえ方を、
これまでわたしはしらなかった。
秋が季節のなかでいちばんすきで、
秋をまちのぞむわたしは、
そのまえにたちはだかる夏をにが手としている。
ののちゃんにならえば、
あと3ヶ月も秋まちの期間がある。
夏のあつさにくるしむいまこそ、
いちねんでいちばんいい時期なのだと
最悪から最高へと評価がいれかわる。
ただ、ののちゃんは、3ヶ月まえから
「夏休み待ち」にうかれていたのではない。
夏やすみがあと2週間後にせまったいまだから、
こころから夏やすみまでの時間をたのしめる。
どれくらいまえから「◯◯待ち」がスタートするのかは、
そのイベントがどれだけかがやいているかによる。
たとえば家族で外食にでかけるからといって、
2週間もまえからうかれるのは無理があるだろう。
ののちゃんにとっての夏やすみは、
2週間まえからうかれはじめるのがちょうどいい スペシャルな時期だ。
むかしから、たとえば旅行のたのしさは、
旅行自体よりも計画するとき、
みたいなことがいわれていた。
ただそれは、旅行の計画をたてたり、
ホテルの予約をいれたりするたのしさのことで、
旅行に関するじっさいの準備ともいえる。
ののちゃんは、そうではない。
なにもないのに、夏やすみがもうすぐはじまる事実が、
ただそれだけで ののちゃんをうかれさせる。
夏やすみ自体がすばらしいイベントなのはもちろんだけど、
そのまえの期間だって、無為にすごすのはもったいない。
ののちゃんのように、2週間まえからうかれれば、
すでに夏やすみを満喫しているようなものだ。
「夏休み待ち」にうかれても、
じっさいの夏やすみがぼやけるわけではないし、
余分な費用がかかるわけでもない。
適切な時期で「待ち」のたのしみをスタートさせるのは、
人生をじゅうじつさせるうえで、大切なテクニックかもしれない。