夕ごはんをたべながら、シネフィルで『ロング・トレイル!』をみる。
老人ふたりが森のなかをあるいている。
番組情報のボタンをおすと、
ふたりはどうやらレッドフォードとニック=ノルティらしい。
その気になってみると、わらい顔がすこしレッドフォードっぽくなる。
『愛と悲しみの果て』では、
サファリのガイドをしていたレッドフォードが、
30年後のこの作品では、あしもとのおぼつかないおじいちゃんになる。
歳をとるシビアさとは、こういう変化をうけいれることだ。
ニック=ノルティも、まさかこの老人が、
エディ=マーフィーと『48時間』をえんじた
タフでがんこな刑事とはしんじられない。
ウィキペディアをみると、2015年の作品なので、
レッドフォードが79歳、ニック=ノルティは79歳のときに
この『ロング・トレイル!』はつくられている。
とちゅうからみたので、ストーリーはよくわからない。
ふたりがアメリカのトレイルを何ヶ月もかけてあるいていた。
あとからネットをみると、アパラチアン=トレイルといって、
3500キロもあるトレイルコースらしい。
まさしく「ロング・トレイル」の名にふさわしい。
自然のうつくしさ、あるくたのしさがメインの作品ではなく、
あるきつづけることによって、
なにをふたりがなしとげようとしているかがテーマとなる。
せっかく国立公園のなかをあるきながら、
ふたりはどうでもよさそうなはなしをブツブツいいあっている。
テントでねたり、アウトドアらしい食事をしたりの場面もあるけど、
それよりも 印象にのこるのは、
人生のおわりをむかえようとしているふたりが
自分の内面をみつめ、生きかたを、なんとか整理しようとする姿だ。
このごろ20キロや30キロといった
ながい距離をあるくようになったわたしは、
ふたりのあるきっぷりに目がいく。
作品としてなにを表現しているかよりも、
わたしもこんなふうにあるきたい、とおもってみていた。
何ヶ月もあるいている(という設定)のわりには、
ふたりともさいごまでふとったままだ。
もうすこしやつれたり、ほっそりしてもよさそうなものなのに。
それにしても、ながいトレイルコースがあるアメリカがうらやましい。
日本には、登山を目的としたコースはたくさんあるけど、
アメリカみたいなトレイルがなくて残念だ、なんておもっていたら、
ネットをみると、日本にも、100キロをこえるコースがいくつもあった。
わざわざアメリカにまで、そして、フランスやスペインの
サンティアゴ巡礼にまで でかけなくても、
とりあえず、日本でも長距離トレイルが体験できる。
なぜながい距離をあるくのがたのしいのだろう。
あるくときに からだをうごかすスピートが、
脳みそにちょうどいい刺激なのではないか。
はしるより、自転車よりも、いまはながい距離をあるきたい。
いまからしっかりあるいておけば、
80歳にもしなっても、作品のなかのふたりより、
もうすこしましなあるきができるのではないか。