(西部謙司・学研プラス)
W杯がおわってまだ2ヶ月ばかりなのに、
もうずいぶんむかしの出来事におもえる。
決勝戦がフランスとクロアチアだったことさえわすれていた。
本書は、ベスト8にのこった国々を中心に、
予想に反して予選でやぶれさったドイツ、
ベスト16におわったスペインとアルゼンチン、
そして予想外に健闘した日本をラインナップにくわえ、
ぜんぶで11カ国の試合内容を分析している。
国ごとの分析をみると、
ざっくりとした印象でとらえていた
それぞれのスタイルが整理できる。
アルゼンチンはあまりにもメッシだのみだったけど、
それはそれで、アルゼンチンにとって
しかたのない選択でもあった。
スペインのポゼッションサッカーは、
結果としてはベスト16にとどまったけど、
スペインはこれからもパスをまわしつづけるだろう。
それぞれの国がそれぞれのスタイルをもつなかで、
決勝をあらそったフランスとクロアチアは、
はっきりした特徴のないチームだった。
特徴の明確な強豪が次々に敗退していく中で、状況と相手に応じて自分たちの戦い方を変える対応型のフランスが生き残り、同じタイプのクロアチアとの決勝になったのはロシアワールドカップの傾向をそのまま表していたといえる。
チームずくりを、多様型と均質型にわけてとらえると、ロシア大会は、
多様性をもったチームがかちのこった大会と西部さんはみている。
日本や韓国は均質型の典型だけど、
そこに多様性をもちこまなければのびしろがない。
ただ、日本社会に多様性をもとめるのは時間がかかる、
というのが西部さんの分析だ。
ベスト8まであと一歩までは行けたが、実はベスト8を占めるチームの多くが多様性を持つオールマイティー型であり、ここに食い込むのはベスト16とはまた違った壁がある。
ロシア大会の戦術的傾向が、本書は理論整然と分析されている。
数々の試合をおもいだしながら、雑然とした印象が
きれいに整理される気もちのよさを味わえた。