(ジャナ=デリオン・島村浩子:訳・創元推理文庫)
CIAの秘密工作員であるフォーチュンは、
まえの任務で派手にあばれすぎたため、
しばらくルイジアナ州の田舎町、シンフルで
身をひそめることになる。
上司の姪になりすまし、ほとぼりがさめるまで
おとなしくすごすだけの任務だ。
フォーチュンは、20代の女性なのに、
これまでかかわった事件で ことごとく死体の山をきずいている。
冷徹な殺人鬼なわけではなく、ただ単にけんかっぱやく、
「つい」とどめをさしてしまうクセがあるらしい。
上司の姪は、ミスコンの女王で、
あみものが趣味のおとなしい女性だ。
フォーチュンとはぜんぜんちがう性格だけど、
なんとか彼女になりすまし、シンフルでの生活がはじまる。
フォーチュンについて、うつくしいとか、
どんなスタイルなのかなど、
こまかなひととなりはどこにもかいてない。
よんでいるうちに、おいおい彼女の思考パターンと、
事件にまきこまれがちで、おさわがせな性格がみえてくるしかけだ。
わかくて、運動神経にすぐれ、けっこうなりゆきまかせで、
こまかいことはどうでもよさそうな性格は、
とてもCIAの秘密工作員にはおもえない。
CIAの秘密工作員で、死体の山をきずいた、なんていうと、
血も涙もない、なさけ無用のつめたい人間を想像するけど、
フォーチュンは、ただめぐりあわせがわるいだけで、
自分では、ごくふつうにふるまっているにすぎないとおもっている。
それでいて、余計なトラブルをまねき、
腕がたつものだから、きっちりとどめをさしてしまう。
そこらへんの仕置人的なすご腕は、『イコライザー』にでてきた
デンゼル=ワシントンみたいだと、いえなくもない。
軽ハードボイルドにでてくる探偵みたいに、
やたらと軽口をたたくけど、じょうずにひねられた、
気のきいたひとこと というよりは、
状況をおおげさにさわぎだてする女子高生みたいだ。
よんでいて、おもしろいとおもえるか、
ついていけないとかんじるか、読者をえらぶ文体で、
わたしはなんとかさいごまでついていけけど、
キレのあるジョークには期待しないほうがいい。
ドタバタがすきなひとには たのしめるかもしれない。
ルイジアナ、といわれたフォーチュンは、上司にたずねる。
ルイジアナ・・・というのは、湿地とワニと田舎者がいっぱいという意味ですか?上官のこたえは、
愉快な人々が比較的ゆっくりしたペースで暮らしている、小さな町という意味だ。
このやりとりがわたしごのみだったので、
全体にこのレベルかとおもったら、
そのあとは低調な軽口におわっている。
フォーチュンがでてくる小説は、
シリーズになっており、本書がその1作目だ。
フォーチュンの活躍だけでなく、
いちおう謎ときの要素も もりこまれているので、
あんがいたのしめるひともおおいかもしれない。
ほんとうにおすすめできるかどうかは、
もう1作よんでみるまでの保留としたい。
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