2019年01月16日

『行商人に憧れてロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』(春間豪太郎)

『行商人に憧れてロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』
(春間豪太郎・KKベストセラーズ)

旅行からかえったばかりだけど、春間豪太郎さんの
『行商人に憧れてロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』
をよんでいると、またぞろ あるきの旅行がしたくなってきた。
本のタイトルどおり、春間さんは、
ロバといっしょにモロッコを1000キロあるいている。
ロバだけでなく、ネコやニワトリ、犬にハトと、
いっしょに旅をする動物が、だんだんふえていく。
必然的に野宿がおおくなり、客観的にみると
ずいぶんタフな旅なのに、春間さん本人はじつにたのしそうだ。
自分がどれだけたいへんな旅をしているか、なんて
春間さんは自慢しない。
自分のちからをすべてだしきる充実感が、
本書のいたるところでかたられている。

わたしはタイの旅行で、ながい距離をあるこうとおもっていたけど、
もともとそんなガッツはないものだから、
現地につくと、せいぜいながめの散歩くらいで、
あとはタイマッサージとビールのデカダンスにとどまった。
きっと、なんど旅行にでかけても、得るもののない、
おなじような時間をすごすだけなのだろう。
そんなわたしでも、すぐれた冒険や旅行記はかぎわけられる。
本書は、まちがいなく第1級の冒険によるおもしろ本だ。

ロバとあるくのも、奇をてらった企画で
まわりをおどろかそうというつもりはなく、
ただやってみたかったからにすぎない。
ただ、やるからには、まえもって情報をあつめ、
しっかりした準備と、まいにちのチェックをおこたらない。
語学のセンスがあるらしく、
モロッコのまえに3ヶ月すごしたカメルーンで
フランス語をはなせるようになっている。
エジプトでの体験からアラビア語もおぼえた。
お金をできるだけつかわないで旅をしているし、
つかわないどころか、旅のはなしをしたり、
写真撮影に協力したりして、お金をかせいでいる。
1000キロあるき、ゴールのタンジェまでの滞在費を、
たった3000円にみつもっているのもすごい。
いくらモロッコの物価がやすいといっても、
いちにちいくらですごすつもりなんだろう。
モカ(ロバ)の餌やり中にサソリを見つけた。サソリを間近で見たのは初めてだったので、ラテ(子ネコ)を十分に遠ざけた上でさされてみることにした。

ずいぶんむちゃなひとなのだ。
ふつう、サソリをはじめてみたからといって、
わざわざさされてみるひとはそんなにいない。

この本をよんでかんじるのは、
春間さんの自由な精神とやわらかなこころだ。
野宿やコミュニケーションなどの旅のスキルがたかいため、
たいへんな旅をしていながら、
危険をさけ、ときにはモロッコのひとのふところにはいり、
やりたいことをスルスルと実現させていく。
春間さんは自分の能力すべてをかたむけて、
やりたかった旅にとりくむときによろこびをかんじている。
自分のちからで目のまえの問題に対処し、自信をつけ、
さらに困難な局面でも、のりきるちからをつけていく。

夏のモロッコをあるくのだから、
とうぜんものすごくあついだろうに、
春間さんはシャワーやビールがなくても弱音をはかない。
ホテルなんかにとまらず、野宿が基本の旅だ。
こうした旅のスキルを、これまでの体験により春間さんは身につけ、
やしなってきた たかい実力のもとに、モロッコでの旅は実行された。
旅のおともをする動物たちと、
彼らの安全を第一にかんがえる春間さんのやさしさもいい。
こんなすてきな旅を、本で味あわせてくれた春間さんに感謝したい。
タグ:冒険

posted by カルピス at 21:52 | Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする