2019年02月05日

『奇跡の2000マイル』

『奇跡の2000マイル』
(ジョン=カラン:監督・2014年・オーストラリア)

わかい女性が、愛犬をつれ、オーストラリアの砂漠を、
ラクダ4頭とともに 2000マイルの旅にでる。
オーストラリアの中央部にあるアリススプリングスから
インド洋をめざす、とあるけど、インド洋といってもひろい。
いったいどのコースをあるいたのか、地図をみてみると、
オーストラリアのまんなかから、
西へむかってインド洋にたどりついていた。
なぜそんなむちゃな旅をするかの説明はとくにない。
ラクダといっしょにあるく旅を、ただやりたいからと、
ロビンはラクダとのせっし方をおぼえ、
お金もないまま、旅をスタートさせる。
だれにはなしても、無謀すぎるといわれる旅へ、
彼女はでかけないではいられない。
過酷な旅になるでしょう。
自分にはおそれおおい挑戦だとわかっています。
でもそれが目的です。
平凡な人間でも、なんだってできるはず。

お母さんの自殺など、おさないころの家庭環境が、
彼女をこの旅へとかきたてるひとつの理由みたいだ。
過去とおりあいをつけるために、
彼女は自分に試練をあたえずにはおれない。
ロビン役のミア=ワシコウスカがぴったりはまっていて、
いつも不機嫌そうな表情で、愛想はないけど、
ふかいところで動物やひとにこころをひらいている。
ラクダとのつきあい方をおしえてくれた老人や、
旅のとちゅうで であうアボリジニーの長老は、
ロビンのみたむきさにひかれ、協力をおしまない。

砂漠のなかにくらしている老夫婦など、
いったいこんな不毛な土地で なにをしているのかと
不思議におもえるひとたちとのであいが印象的だ。
そういうひとたちは、旅の目的などたずねずに、
ロビンをまるごとうけいれて、
食事やねる場所を提供する。
過酷な状況で生きるものだけが身につける、
やさしさにあふれたものごしがすてきだ。

おおくのくるしみがつぎつぎと彼女をまちうける。
旅のとちゅうで、水や食料がつきかけたときもあったし、
かけがえのない愛犬(ディギティ)をうしなった
(毒をのみ、くるしんでいる犬をロビンみずから銃でうちころす)。
ロビンはあまりにもふかいかなしみに、自分をみうしないかける。
ディギティへのおもいをかかえたまま、ロビンはどうにか旅をつづけ、
ボロボロになってインド洋をのぞむ海岸にたどりつく。
おおくの命を犠牲にして、彼女の旅はおわりをむかえる。
なぜロビンはこの旅にでなければならなかったのか わからない。
旅をしなければ、旅によりくるしみを味あわなければ、
彼女は これまでいきてきた自分をゆるせなかった。
砂漠はときとしてうつくしい表情をみせる。
砂漠をあるきつづける旅が、ロビンを浄化させたようにみえる。

posted by カルピス at 22:12 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする