松江城のお堀にすむカメの卵についてほうじている。
タイトルは、
「松江城お堀・カメの卵食害事件」
つづけて、さらにおおきな字で
「自動カメラは見た!!」とある。
担当者として、木脇みのり記者の名が最後にかかれている。
非常に興味ぶかい記事で、
これだけ謎につつまれた「事件」は、
おおさわぎするのがただしい態度だ。
たいした分量ではないから、全文を引用してしまおう。
松江城のお堀にすむカメの卵が何ものかに食べられていることが、県立宍道湖自然館ゴビウスの調べで明らかになった。荒らされた卵の殻が、産卵場所のそので見つかっている。ゴビウスが設置した自動撮影カメラにはある生き物がしっかりと写っていた。果たして「犯人」は?
記事をよんでいるうちに、頭がぼーっとなってきた。
お堀のカメが生んだ卵を、なにものかがたべているという。
重要参考猫として、ノラネコ2匹にうたがいがかけられている。
現場にしかけられたカメラにうつっていたからだ。
でも、これって、新聞がとりあげるべき「事件」なのか。
もちろん「事件」であり、事件であるからには、
犯人をあげなければならない。
なぜカメの卵が問題になっているかというと、
在来種のクサガメの生存が
おびやかされている(かもしれない)からだ。
もっとも、その根拠となるデーターは、
下記のとおり、かなり微妙だ。
お堀には、主に2種類のカメがすむ。在来種のクサガメと、外来種で駆除対象のミシシッピアカミミガメ。その割合は、クサガメ44.6%、ミシシッピアカミミガメ50.7%で、環境の変化に強いミシシッピアカミミガメが上回る。荒らされた卵が、どちらの種のものかは見分けがつきにくく、在来種のクサガメだけを保護するのは難しい。
ゴビウスは証拠を集めようと、産卵場所の近くに、動くものに反応して撮影できる自動撮影カメラを設置した。すると、ハシボソガラス、ニホンアナグマ、ホンドタヌキ、ホンドギツネと、2匹の猫の姿をとらえた。
卵を食べている姿は写っていなかったが、調査を担当した山口勝秀さん(49)によると、カメの産卵は明け方が多いという。撮影時間を調べたところ、早朝に撮影されたのは2匹の猫だけ。ほかは深夜だったという。
猫の1匹は、口の周りや体に特徴的な黒の模様があり、もう1匹はキジトラの毛色だった。この2匹を知っているという松江市の男性(71)に話を聞くと、「どちらも松江城周辺に出没する野良猫だ」と言う。ゴビウスによると、野良猫がカメの卵を食べているという報告は他県でもあるという。「出没する」なんていわれると、まるでネコが犯人みたいだ。
推定無罪の原則から、まだネコの有罪がきまったわけではない。
在来種のクサガメには、食害の影響とみられる深刻な事態も進む。調査で捕獲した個体の86.8%が高齢で、若い世代が育っていないという。「個体の86.8%が高齢で、若い世代が育っていない」がなかせる。
カメの世界も、少子高齢化でこまっているのだ。
山口さんは、「食害の犯人は猫だと断定できないが、引き続き調べる」と話している。どうかがんばってほしい。
ネコがどんなふうにカメの卵をたべるのか、みてみたい。
わたしの職場ではなしあったところ、ネコがカラスに命令して、
卵のカラをわらせたのでは、という説が有力だった。
この記事を、おおきな紙面でほうじようとした、
松江総局内のやりとりに興味がわく。
木脇記者は、まさか自分のかいたこの記事が、
地方版のトップをしめるとは、
おもっていなかったのではないか。
デスクがおもおもしく決断し、
木脇記者に指示をだした場面をみたかった。
島根は、カメの卵におおさわぎするほど平和だと、
朝日新聞・松江総局はつたえたかったのだろう。
朝日新聞の島根版は、きょねんの記事で、
市街地にでてきたイノシシについてほうじていた。
イノシシがおばあさんをおそおうとしているのを、
ぐうぜんパトカーでとおりかかった警察官が、
とっさに機転をきかせてたすけたという。
島根らしい記事だと感心していたら、
こんどはネコが「重要参考猫」によばれてしまった。
島根には、ディープな自然がいっぱいだ。