2019年02月10日

「ターミナル」

「ターミナル」
(スティーブン=スピルバーグ:監督・2004年・アメリカ)

せんじつタイに旅行したときは、
飛行機のおくれにより いきもかえりも
かなりの時間を空港ですごした。
いきは関空で11時間、
かえりはタイのドンムアン空港で8時間。
関空では、出国審査にいれてもらえず、
出発フロアでひたすら時間がすぎるのをまった。
このときから、映画「ターミナル」が頭のすみにあった。
名前はしってるけど、まだみたことのない作品。
空港からでられないでいる 旅行客のはなしらしい。
数時間のおくれでさえうんざりするのに、
何ヶ月も空港ですごすなんて、どんな心境だろう。

トム=ハンクスがえんじるナボルスキーは、
英語をはなせないので、
まわりとのやりとりがトンチンカンになる。
いわれていることがわからないし、
自分のいいたいことを理解してもらえない。
ことばがつうじない状況が、どれだけストレスかを
わたしはこれまでにいやというほと体験してきた。
ナボルスキーは、入国がみとめられなくても、
おちこんだり、パニックになったりせず、
ひたすら現実的に対処していく。
ねる場所をととのえ、たべものをかうためのお金をかせぎ、
できることを ひとつひとつ つみかさねていく。
英語と自国語のガイドブックをよみくらべ、
英語を理解できるようになった。

ナボルスキーは、ガンプみたいにものすごく善意のひとで、
なにをするにしても、だれにたいしても、
ズルをせず、自分のかんがえを堂々とつたえる。
そんな彼のよさがだんだんとみとめられ、
やがて空港ではたらくひとたちの
アイドルみたいな存在になっていく。
はじめはトム=ハンクスの演技がおおげさにおもえ、
いまひとつ気もちがはいっていかなかったけど、
そのうちわたしもナボルスキーの魅力にとりこまれた。

ナボルスキーにいじわるをする警備局のおえらいさんが、
なぜあなたのような女性が、彼に好意をむけるのかと、
キャビンアテンダントのアメリアにたずねる。
「あなたのような男性が、ぜったい理解できないこと」
と彼女はこたえた。
そう。ある種のひとたちは、
ナボルスキーの魅力を、ぜったいに理解できない。

こまかな点についていうと、
入国をみとめられなかったナボルスキーが、
なぜおおきなカバンをもって
空港のなかをあるきまわっていたのか気になった。
入国審査のあとで、コンベアーへ荷物をとりにいくながれだから、
特別にみとめられて自分の荷物をうけとる場面がなければ、
ナボルスキーは手荷物だけしかもっていないはずだ。
いつ、だれがナボルスキーのかばんを彼に手わたしたのか。
時間のかぎられた映画のなかで、
いちいちそこまで説明するのはよけいだからと
はぶかれたのだろうけど、
そうしたささいなうごきもおさえたほうが、
ものがたりにふかみをあたえるのではないか。

この作品のキーワードは「まつ」ことだった。
ナボルスキーは、数ヶ月を空港内でまっている。
人生は、まつことだらけだ。
ひとは、いつもなにかをまっている。
旅行だけでなく、日常生活でも
なにかを手にしようと まっている。
ナボルスキーは、まつことをいとわない。
なにかをまつって、じっさいは、どんなことなのだろう。

posted by カルピス at 21:31 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする