2019年08月20日

『辺境メシ』(高野秀行)ネコ用ちゅ〜るさえも体験ずみ

『辺境メシ』(高野秀行・文藝春秋)

辺境作家の高野さんが、これまでに体験した
めずらしいたべものを紹介している。
高野さんファンのわたしは、高野さんの本をほとんどよんでいる。
それでもしらないはなしがおおく、
もともとたべものへの関心がつよいので、たのしくよめた。
アフリカ・南アジアなど、地域ごとに章だてされており、
日本の章では7項目がもうけられている。
おもしろかったのは、ネコ用おやつの「ちゅ〜る」について。
ちゅ〜るはネコに絶大な人気があるおやつで、
しらないネコでも ちゅ〜るをあげると かならずたべてくれる。
そのときの反応は、すこしたべてみて「ん?」となり、
すぐに「はっ!」となって、夢中でたべだす。
あまりにもネコをとりこにしてしまうので、
なにかおかしな成分がふくまれているようにおもってしまうけど、
材料に問題はないようだ。マタタビがはいっているわけではない。

そのちゅ〜るを、高野さんががとりあげたのは、さすがといえる。
ネコだけのたべものにとどめず、
ちゃんと味をたしかめているからすごい。
もっともこのときは、料理研究家の
枝元なほみさんとの対談がきっかけだ。
枝元さんの手により ちゅ〜るはこじゃれた料理になっている。
クラッカーに蕪のスライスを載せ「まぐろ」のちゅ〜るをかけ、ピンク胡椒とイタリアンパセリを散らした見事な一品。パーで頼んだら千円ぐらしそう。(中略)シーチキンをとろとろにしてさらにうま味を加えたような、調味料なのか食べ物なのかよくわからない不思議な食感と味。世界のどこの国でも経験したことがない。

なんだかすごくおいしそう。
「これは人間用にしても受けるのではないか」と、
高野さんはネコと人間が、ちゅ〜るをあらそう日を予言している。

ちゅ〜るのほかでは、タイの東北地方でたべた
「虫パスタ」がおもしろかった。
タイの東北地方は昆虫食の本場として有名で、
このとき高野さんは「虫イタリアン」のお店をたずねている。
高野さんが「何品かたべてみたい」というと、
「まず虫を買ってきて」と店の若者が市場へつれていってくれた。
虫をつかった いくつかの料理をたべたあと、
さいごにでてきたのが「虫パスタ」だ。
食べてみると、トマトソースの深い味わいに感心する。よく熟れたトマトを使って、隠し味にタイの調味料のナンプラーを加えているという。まさに土地の食材と味つけをふんだんに応用した創作イタリアンの好例!なのだが、これも虫が多すぎ。だんだん、げっそりしてくる。
 そして、いったんげっそりしてしまうと、後は食べるのがとても苦痛になってきた。ゲンゴロウがゴキブリに酷似していることもあって、残飯のパスタの上に虫がたかっているようにしか見えなくなるからだ!
「残飯を食べている虫を食べている俺」というイメージが脳内をぐるぐる回ってとまらない。

お皿もられたパスタのうえを たくさんのゴキブリがはいまわり、
そのゴキブリ(によくにたゲンゴロウ)もろとも
残飯のパスタをたべようというのだから、
心理的につよい抵抗があるだろう。
「残飯を食べている虫を食べている俺」は、かなりトホホな場面だ。
昆虫食にわたしは偏見がないけど、ゴキブリだけはたべたくない。

posted by カルピス at 22:25 | Comment(0) | 高野秀行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする