新城幸也選手のタイ合宿を猪野さんがおとずれ、
いちにちをとおして練習につきそったものだ。
合宿所はタイ北部のチェンライにあり、
練習では、ラオスとの国境の町、チェーセンへもでかけている。
いずれもわたしが旅行でとおった町で、
なつかしさとともに、タイの激坂をおもいだした。
チェンライから、タイ北部の中心都市、チェンマイまで、
なんどもバスでとおったことがあるけど、
トイレで用をたすのもむつかしいほど
急カーブがおおく、バスがはげしくゆれる。
もちろんたいらな道ではなく、けわしい山をとおる道なわけで、
タイ北部は、いたるところがそのような山のつらなりだ。
わたしもチェンマイへ自転車をもちこんだことがあったけど、
どこへむかっても山なので、わたしの実力では歯がたたず、
はやばやと自転車をたたんでバス旅行にきりかえた。
そんな場所で、新城選手は合宿をはっている。
激坂をふくむコースで、まいにち200キロ以上はしり、
午前・午後ともクライマックスでは
バイクのすぐあとについてはしる スピード練習にもとりくむ。
猪野さんは、とびこみで取材したのではなく、
新城選手から招待されての訪問だ。
3年前のチェンライ合宿で健闘がみとめられ、
こんかいの合宿にも声がかかった。
3年まえ、きびしい練習に必死でついていった猪野さんは、
きゅうけいにはいった店でスイカをたべたとき、
おもわずなみだをこぼしている。
新城選手がじきじきにスイカをきってくれたこと、
スイカのあまさがつかれたからだにしみわたったこと、
地獄の練習になんとかくいついて、休憩所までたどりついたこと。
いくつものおもいがかさなってのなみだだ。
こんかいの合宿でも、休憩所でスイカがでてきた。
3年まえをおもいだし、猪野さんはここでもなみだをこぼす。
新城選手は、猪野さんが3年まえにくらべ、
ずいぶんちからをつけたと評価していた。
猪野さんの、まいにちつみかさねた努力が、実をむすんだ瞬間だ。
坂バカをつづける猪野さんが、このところ妙にかっこいい。
坂をいやがるのではなく、ごちそうだと発想をきりかえて、
体力の限界にいどむ自転車旅行をやりたくなった。
番組の後半は、猪野さんが国内の坂バカたちと
彼らが自慢するご当地坂をたのしむ企画へとつづく。
こんかいは、徳島市にある眉山(びざん)へ
地元のチャリダー といっしょにのぼる。
3キロにみたない みじかいコースとはいえ、
スタート直後に15%勾配の坂がはじまり、
猪野さんもすごくくるしそうだ。
そんな激坂なのに、そのくるしさゆえに
眉山を愛するチャリダー もまた たくさんいる。
坂にくるしみながら、どうじにうれしそうという、
坂バカならではの表情をうかべていた。
わたしには理解できない坂バカの世界。
うれしそうに激坂をのぼる坂バカたちが、
すこしうらやましかった。
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