(椎名誠・新日本出版社)
たべものにまつわるエッセイ。
前半は、タマネギへの愛がおおくをしめ、
後半は、日本ではやりつつある なんだかんだに、
イチャモンをつける。
糸井重里さんは、野菜とはすなわちキャベツのことでは、と
「今日のダーリン」で発見をかたっている。
椎名さんにとって、いちばんえらいのはタマネギとなる。
たしかに、キャベツがなければ いろいろとさみしいし、
タマネギの存在感も、野菜のなかでとびぬけている。
わかいころ、仲間たちと貧乏な共同生活をしていたころ、
椎名さんはタマネギにめざめる。
炊きたてのごはんの上にカツオブシとタマネギを炒めて醤油で味つけしたのを惜しげもなく全部ドサっとのせて四人でわしわし食うと、もう何も文句ありません状態になった。
タマネギはちょっと赤っぽい透明のアミの袋に入っている。(中略)寝るときはみんなそのタマネギを見上げることになる。タマネギのいっぱい入ったあの網袋はぼくたちのシャンデリアだった。
わかくて、ビンボーで、いいはなしだ。
本のなかで紹介されている
「タマネギ丸ごと十個焼き」をためしてみた。
丸ハダカにしたタマちゃんの底を包丁で丸くくり抜く。上のほうは軽く十字に切っておく。そうしてフライパンに薄口醤油を薄くいれて十個いっぺんに煮る。(中略)蓋をして全体に熱が回るようにする。全体に熱が通ったところで上のほうにも薄口醤油をさっとたらし、蓋をしてダメおしにもうちょっと火を通してできあがり。
これがうまいんだよおー。
ちょうどスーパーで、10個ほどのちいさなタマネギが
150円でうれていた。
ちいさいければ、火がとおりやすいだろう。
うすくち醤油はないので、ふつうの醤油をつかった。
それだけではなんだか心配なので、酒とブイヨンもいれる。
せっかくだから、手羽元とエリンギもくわえた。
フライパンではなく圧力鍋にたよる。
ここまでくると、もやは別料理だけど、
なにごともレシピどおりつくれないわたしなので、
これぐらいの変更はいつものことだ。
みじかい時間で、ボリュームのある料理ができあがった。
椎名さんは新タマネギをすすめていたけど、
いまはないのでふつうのタマネギをつかっので、
あんがいタマネギのかたさがたもたれている。
「これがうまいんだよおー」というほどにはしあがらなかったけど、
かんたんで、たしかに わるくない。
なによりも、包丁でタマネギを
こまかくきざまなくてもいいのが気にいった。
この夏おぼえた料理に、ピーマンの丸やきがある。
魚やき用のグリルに あらったピーマンをそのままならべる。
グリルの火力は強力で、すぐに火がとおる。
すこしこげめがついたピーマンに、メンツユをかければできあがりだ。
ピーマンのヘタと種をとるわずらわしさがなく、
ピーマンのおいしさを丸ごと味わえる。
なにごとも丸ごとつかうのは、素材をいかす、
理屈にあった調理法かもしれない。
魚やき用のグリルは あらうのがめんどくさいけど、
ピーマンをやいたからといって、油はでないので よごれない。
あとがきには、妻である一枝さんのつくる朝ごはんが
いまでは最強の食事、とある。
国内外で、いろんなものをたべてきた椎名さんの結論が、
家での朝ごはん、というのも、人生のしめくくりをかんじる。