日曜日、朝8時10分からの「現代の音楽」(NHK-FM)を
毎週たのしみにきいている。
担当は、作曲の西村朗さんで、どんなひとをあいてにはなしても、
リラックスしたおしゃべりがいつもここちよい。
対象となる作曲家や曲について わかりやすくはなされるので、
現代音楽についてなにもしらないわたしなのに、
ついきき耳をたててしまう。
日本をふくめ、世界じゅうの作曲家の動向にくわしく、
だれとはなしても、ふるくからのしりあいみたいだ。
そのどこがよくて、なにがすごいのかを
きれいなことばえらびで説明される。
きっと、文章もすてきなのだろうと想像している。
といっても、わたしがおもしろくきくのは、
あくまでも西村さんのおしゃべりについてであり、
いざ「現代音楽」がかかると、そのよさがちっともわからない。
クラシックとはまるでちがう音楽であり、
わたしには難解すぎて、いくらきいても興味をひかれない。
西村さんのおしゃべりだけがすき、というよくないファンだ。
たとえば、きのうの放送では、ゲストの藤倉大さんを、
「いま世界でいちばんおおく演奏されている日本の作曲家です」
みたいに紹介したすぐそのあとで、
「で、もうかりますか?」
なんて、西村さんはぬけぬけときいている。
チャッチボールかとおもってはなしていたら、
ずばっと直球がきた、みたいなかんじだ。
「もうかりますか?」ときかれて
「ぼちぼちです」
とはまさかいえないだろう。
たずねられた藤倉さんは、自分は音楽をおしえる場がなく、
定期収入がはいらないので、とかなんとか
「もうかってない」ことの説明にやっきになっていた。
いきなりの直球なので、ゲストのかたがたは
いいかっこばかりではすまなくなる。
「すごい作曲家」なはずの藤倉さんも
西村さんとのおしゃべりでは、はなしずきなふつうのおっさんだ。
大活躍ちゅうの有名人とはなしていて、
なにげなく「で、もうかりますか?」ときけるのは、
好奇心のひとつがあらわれただけで、
いつもそこに西村さんの関心があるわけではない。
ただ、活躍ちゅう、といわれたら、
「もうかっているのだろうか」と、
おおくのひとのあたまに うかんでくるのではないか。
西村さんは、それをためらわずに、話題としてしまう。
ちからがぬけているからこそできる、達人の話術だ。
音楽の専門的な話題にうつり、ややこしいはなしになると、
視聴者にもわかるように適切な説明をくわえるので、
おしゃべりをきいているだけでたのしいし、
ゲストたちももはなしやすそうだ。
正確な知識と、ゆたかな教養が背景にあるので、
西村さんは、だれとはなしても自然体でいられるのだろう。
ゲストたちは、するするとお腹のなかをあかしてしまう。
いい気分で番組をきいていて、
それでは音楽をかけましょう、と「現代音楽」がながれると、
わたしにはちっともわけがわからなくなる。
西村さんのおしゃべりだけをきいていたいという、
よくない視聴者へとかわる。