『サイレンズ・イン・ザ・ストリート』
(エイドリアンン=マッキンティ・武藤陽生:訳・ハヤカワ文庫)
北アイルランド紛争を背景に、
刑事ショーン=ダフィが活躍するシリーズの2作目。
北アイルランドでは、いくつもの団体が
テロなどの過激な活動をくりひろげており、
土地でおこる事件のおおくは そうした武装団体のうごきがうらにある。
ややこしい情勢ぬきにはかたれないのが北アイルランドであり、
それなのに、北アイルランド問題にうといわたしは、
ダフィがカソリックかプロテスタントかさえ、すぐわすれてしまう。
本書をよみはじめたのが9月28日で、
その1ヶ月後のきのう、ようやくよみおえている。
夜ねるまえに、寝酒をのみながら、1章か2章ずつよみすすめる。
いいわけをさせてもらえば、そうしたよみ方が、
この本にはあんがいむいており、ダラダラした読書ながら
なげださずにおわりまでよみとおせた。
ストーリーの展開にわくわくするというよりも、
作中にただよう おもくてけだるい 独特の雰囲気をたのしむのが、
いちばん、とはいえないまでも、本書のひとつのよみ方であり、
それには ながい日数をかけて すこしずつ、もわるくない。
ダフィをふくめ、同僚の警官たちは、
北アイルランドがかかえる複雑な状況にうんざりしている。
それでも彼らはどこかへにげだすわけにいかず、
自分たちがやらなければならない仕事をつづけるしかない。
家庭がこわれかけたり、酒でボロボロになる警官もおおい。
ダフィの恋人も、先のみえない北アイルランドにいるよりもと、
イギリスへひっこしてしまう。
ダフィは彼女がでかけるのをとめられない。
ダフィは、警察の人間であるという義務感から、
目のまえにある仕事をほおりださず、愚直にとりくみつづける。
うまくいかない仕事をおえ、いらつきながら家にもどると、
ふるい音楽をきき、ウォッカのラムジュースわりで気をまぎらす。
北アイルランドにいるかぎり、なにかがすっきりと
根本的に解決するなどありえない。
そうしたグダグダ感が、このシリーズの魅力となっている。
一冊をよみおえたあとも、いったいなにがおきたか把握しきれない。
わたしの頭のなかはぐちゃぐちゃなまま
ものがたりがおわってしまった。
それでもおもしろくよめるのだから、
ミステリーにはいろんなタイプがあるものだ。
北アイルランド紛争を背景に、おさきまっくらな雰囲気が魅力、
というふしぎなこのシリーズを、わたしは案外気にいっている。