『ホリデイ』(ナンシー=マイヤーズ:監督・2006年・アメリカ)
家をとりかえて休暇をすごした2人の女性のものがたり。
それぞれ恋愛が破局をむかえたのをきっかけに、
環境がかわれば気分もかわるだろうと、
おたがいの家をとりかえて、2週間の「ホリデイ」をすごそうとする。
(以下、ネタバレあり)
ロンドンではたらくアイリス(ケント=ウィンスレット)は、
恋人だとおもい、3年間つくしてきた男性が、
自分とは別の女性と婚約したことでショックをうける。
自分がいいようにもてあそばれていたのをしり、
涙にくれ、しばらくたちあがれない。
ロスにするアマンダも、恋人が浮気していたのをかぎつけ、
家からおいだしてしまった。
アマンダは、「ホーム=エクスチェンジ」のサイトで
アイリスの家をみつけ、アイリスに家の交換をもうしこむ。
かなしみにしずんでいたアイリスは、
気分をかえるのにいい機会だとおもい、アイリスからの提案をうける。
リアリティをもとめるわたしは、
家の交換(ホーム=エクスチェンジ)を提案されてから、
つぎの日にはもう旅だつなんて、
いくらなんでもいそぎすぎにおもえる。
家のどこになにがあるかのひきつぎや、
出発の準備や部屋のかたづけなど、
そんなにたやすく旅だてるだろうか。
かっている犬の世話についてもひとこともふれなかった。
犬の気もちはどうなるんだ。いきおいで交換をいそぎすぎる。
なんだかなー、とあまり気のりしないでみていたけど、
2人の女性が交換さきの家であたらしいであいにめぐまれ、
いきいきとすごしはじめると、画面にひきこまれはじめる。
よかったのは、アイリスが、
ロンドンからわざわざ自分にあいにきた元カレを
みごとにおいかえした場面。
はじめは元カレが自分を必要としてくれたと、
うっかりよろこんでしまうが、けっきょく彼はふたまたをかけ、
いいように自分を利用しようとしているだけだとみぬく。
3年間、さんざんつらいおもいをしてきたうっぷんもふくめ、
「わたしをあまくみないで!」ときつくおいだしてしまう。
近所でしりあったあった老人(引退した有名な脚本家)に、
きみは主役ができる女性なのに、
わき役ばかりやっている、と指摘され、
アイリスは自分が人生の主人公であるのに気づく。
自分をもてあそぶ ろくでもない男にまよわされなければ、
アイリスはやさしく、いきいきと生きていけるひとだ。
自分の気もちそのままを大切に、
まわりのひとたちへ、こころをひらいてかかわることで、
アイリスは自分らしく生きていくつよさを身につけていった。
アマンダは、ロンドン近郊にあるアイリスの家で、
アイリスの兄、グレアム(ジュード=ロウ)とであう。
おたがいに好感をもつものの、休暇は2週間しかない。
ややこしい事態におちいらないよう、
感情のコントロールになやみながら ふたりはひかれていく。
ラストにちかいシーンで、空港へむかうタクシーのなか、
アマンダは、グレアムをおもうあまり、
自分が涙をこぼしているのに気づく。
両親の離婚により、16歳でないて以来、
もう涙をながせないかとおもっていたのに、
感情のしばりをときはなてたことで、彼女は涙をとりもどせた。
おおいそぎでグレアムのもとえとひきかえし、家にはいると、
グレアムもまた涙をこぼしている。
ふたりとも おなじ気もちであいてをつよくおもっていた。
ひとつのカットがながく、会話の場面では
俳優たちのこまやかな表情のうつりかわりをたのしめる。
グレアムの娘ふたりがかわいい。
とくに長女のソフィアは上品なほほえみをうかべ、
自然なあたたかみにあふれている。
彼女をみているだけでいい気分になれた。
ラストは、これ以上ないという大団円。
2組のカップルができあがり、むすめたちもまじえ
にぎやかに大晦日がすごされる。
いくつものであいがあり、彼らはそれをしっかりとらえた。
であいをいかせるかどうかは、
自分がどれだけこころをひらけるかにかかっている。