わたしがつとめる介護事業所は、この日にあわせて
お世話になった方々へ、ボジョレー ヌーボーをプレゼントする行事が、
10年以上まえからつづいている。
問題は、ボジョレーをとどけるにあたり、職員が仮装することで、
2名でペアをくんだ職員が、自分たちでアイデアをだした仮装でまわる。
はじめのころは、100均でかった
サンタの格好をするぐらいでよかったのに、
ハロウィンの影響もあってか、だんだんはでな仮装になってきた。
デイリーポータルZの「地味仮装」がすきなわたしは、
どこにでもいそうな、
町でよくみかけるひとへの仮装をこころがけている。
ことし、わたしたちのペアは、スターバックスの店員に仮装した。
ほんものそっくりなエプロンを、手芸雑貨の店でぬってもらい、
しろいシャツをきると、すごくもっともらしい姿になる。
ただ仮装するだけではおもしろくないので、
なにか必然性のあるストーリーがほしいところだ。
こんかいかんがえた筋書きは、
「これまでまいとしボジョレーをおとどけしてきましたが、
事業所が貧乏になり、ことしはボジョレーを
プレゼントできなくなりました。
かわりにスターバックスの出張販売にたのみ、
番茶と白湯をぞんぶんにめしあがっていただきます」
みたいな内容だ。
そして、紙コップに番茶と白湯をつぎ、のんでもらう。
そのあと用意したボジョレーのセット
(鶏肉のグリルと、事業所の製品)を
なーんちゃって、とわたすわけだけど、
もうひとひねりして、イソップ童話の金の斧、銀の斧をとりいれる。
「きのうあなたがわすれた袋は、古新聞がつまった紙の袋ですか、
それともいかにもおめでたそうな、こちらのおおきな袋ですか?」
とお客さんにたずねる。
袋なんかわすれてない、というひとには、
どちらかというと、どちらをわすれられましたか?
としつこくきく。
地味な袋をえらんだひとには、正直ものとして、
はでな袋をえらんだひとには、あまり正直ではないひととして、
けっきょくどちらにも、用意してきたボジョレーセットをわたす、
というながれだ。
どれだけのお客さんが、わたしたちのストーリーに
ついてきてくれるか心配したけど、
あんがいみなさんすんなりと うけいれてくれた。
ふりわけられた12軒への配達をおえ、事業所にもどると、
さきにかえっていたペアが、仮装したまま まっていた。
ことしは、「もののけ姫」・「魔女の宅急便」・「トトロ」
「トムとジェリー」・「スパイダーマン」と、
アニメがらみの仮装がおおかった。
ラグビーW杯の「オールブラックス」を仮装したペアが
最優秀賞にえらばれている。
地味仮装は、わたしたちのペアだけだった。
まいとし、よくこんなおさわがせ企画をつづけてきたものだ。
理事長は、ことしもぶじにボジョレーをおとどけできるのが、
ほんとうにうれしくて、この企画をつづけている。
事業所が、ことしいちねん、健全な経営をたもち、
質のたかいサービスで、利用する方々によろこんでもらえている。
その感謝の気もちを、理事長はボジョレーの配達にこめている。
まいとし仮装のアイデアをねるのはたいへんだけど、
ことしもかわりなくボジョレーをとどけられるのは、
職員としても、名誉であり、ありがたいことと、
よろこばなくてはならないだろう。
つつがなく、ことしもなんとかボジョレーの配達をおえた。
ほっとしながらも、はやくも来年の仮装がプレッシャーだ。
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